うっかりしていた。
解禁二週目は釣れないのだ。
自分のホームページを見返してみると(忘備録になってます)、去年もおととしも苦戦している。その前の年に至ってはボウズだし。
それは解禁日ラッシュの影響か、それともただの思い込みか。
前回の日曜日から週末までの間にかなりの雨が降った。川の様子は明らかに増水のそれで、陽の光もなく風も冷たい。
いや、それでもポイントさえ選べば釣れないことはないだろう。
そんな軽い考えも流れに一歩踏み込んだ瞬間、消えてしまった。
釣り支度は迅速に。なぜだか焦り気味で(^_^;
かなり遡行がきついぐらいの増水だった。
押し寄せるような流れの圧力と水の冷たさ。陽射しもなく風も冷たく、間違いなく解禁の前回よりもこの日の方が冬に近い。
えんやこらと川を歩いて行こうとすると、声が聞こえた。見ると道路に漁協のものらしき軽トラが止まっていて、男が二人こちらに声を出している。
腕章を見えるように出して見せると、腕章の番号と氏名・住所・釣法を聞かれた。
そこまで聞かれたことなんて初めてだったが、なんかあったの?
一番梅の咲く川辺。ただ先週よりはだいぶ寒い。
川で名前と住所まで言わなければならないのはなんとも異常な雰囲気で、やな感じ。
いかんいかん、こんなことでリズムを狂わしていたらこの日はボウズになりかねん。押し寄せる増水の壁の難関が解決していないのだ。
しっかり戦略を練らねば。といってもまずは浮かすか沈めるか、だが。
低い堰堤をひとつ超えたらいくぶん水は落ち着いたような区間になった。ループインジケーターにビーズヘッドのニンフ。まずは今年の低活性時の必釣システムで挑む。
ループインジケーターはキャスティングにも大きく影響しないのがいい。スムーズにキャストできて浮力も視認性もアタリの感度もいいのだから、欠点が見つからない。
唯一、魚が釣れないのはインジケーターの性能のせいではないのだしσ(^_^;)
フラットで水深の浅いところなら浮かせて釣りたくなるのがフライマンの人情というものだ。
そういう流れが現れたらフライを付け替える。
しかしよくよく見てみると、フライボックスのドライフライはたいしてないなあ。解禁前の追い込みタイイングはニンフが中心だったからだが、ドライフライの玉不足はかなり深刻だ。
まあ、それを川で気付いちゃいかんよなあ。

ドライからニンフとインジケーター、そしてその逆と、次々とフライシステムを付け替えながら釣り上がって行った。
しかし一向に魚が飛びかかってくる気配もない。ふと土手を見ると地元の人が犬を連れて散歩している。確かにこの川の土手はいい散歩コースだなあ。季節によってはライズを探しながらってことにもなりうる。
それもこの釣りをしないとそういう楽しみはわからない訳だが。
少しあとで違う人が散歩に現れた。どうもこの土手は地元の人の共有の散歩コースのようだ。
この景色が住む人にとっては普通なのだ。
土手の散歩の人と並走して僕は川を遡る。
当然僕の方がペースは遅く、すぐに引き離されてしまう。もたもたとまたフライを取り換えていたら、折り返した散歩の人が戻ってくる。
その間も、魚が出てくることはなかった。
だいたいこの日はほかに釣り人を見ない。解禁二週目なのだからまだまだ釣り人の多さにうんざり、という状況でもおかしくない。
平日の雨とこの日の天気で、みんな釣りはむつかしいと判断しているのだろうか。
連続する低い堰堤。
平坦な川にはこういう堰堤がいるのかなあ。
何回めかのフライチェンジ。
いまだに浮かせるか沈ませるかの方針は定まらず、現れるポイントに応じて付け替えていた。
一回だけ堰堤からの流れ出しのレーンでドライフライに魚が出た。しかし惜しくもバレてしまった。じゃあドライで通す気になったかというと、そうではない。
どう見ても水面に出てきそうもないような水深のあるプールではやっぱり沈ませたくなる。
沈ませたら釣れる気がするし、水中を攻めずに次へ行くと後悔してしまいそうなのだ。
もう少し水位が下がればドライフライにうってつけの流れになる。
どれくらい歩いただろう。
もういい加減車へ戻らないと、そうとう離れてしまった。
これだけ歩いてバラし一匹のみとは。恐るべし二週目のジンクス。
それにしてもこれだけ増水の川を歩いたのだから、負荷をかけた状態でのトレーニングと同じで、相当のカロリー消費になったに違いない。
そういえばくしゃみが出ないな。前回は連続くしゃみでグロッキーになったが、今回は分厚い水流にやられた。
バサッとフライに波がかぶさった。全くいきなりだった。
ようやくお出ましになったヤマメ様。
なんだかひどくやつれておられる様子です。
痛々しいくらいに痩せたヤマメ。何とか辛うじてボウズを回避できたが、このヤマメも僕もヘトヘトのコンディションだ。
なんだかこのヤマメに辿り着くのに、えらく遠回りをしてしまったような気がする。

さてと振り返る。今度はさかのぼってきた道のりを戻らなければならない。
土手に上がると、川から見るのとは違う知らない風景が広がっていた。
それは散歩の人たちにとっては見慣れた日常の風景だった。
ようやく僕も土手の上に。でもこれからが長い(>_<)