ちゃんと季節に応じてアナウンスの内容を変えているんだ。
確かにここ何日か一気に暖かい。サクラの開花も早まりそうだ。
コーヒーを買い、また高速の本線に戻った。朝は冷え込んだが徐々に気温は上がってきているようだった。
この日の目的の川沿いの道を走ると、やっぱり釣り人の車を何台か見かける。
この天気に、きっとみんな我先にと勇んでやってきているんだ。
空は薄く雲がかかっているが、ほぼ晴れている。
小さなユスリカのような虫も飛んでいる。イケそうだ。
ゆるい流れにキャストしながら川を歩いた。すぐに低い堰堤があり、その堰堤下の浅いプールでフライに出てくる魚がいた。
しかし何度も出てくるが掛からない。ドライフライでは無理か？
堰堤をあきらめまた上流へ歩きだした。
カゲロウが羽ばたいているのが目に付いた。しかも卵塊をつけているやつだ。
重い卵塊にフラフラしながらやっとのことで飛んでいる感じだ。
そうするとそろそろヤマメたちも水面に注意が向いている時間になっていそうだ。
サイズをさっきのカゲロウに合わせてパラシュートを結んだ。
次々とカゲロウが飛び始めた。
今年初めてこれだけたくさんの水生昆虫が飛ぶのを見た。
これでこそフライで釣りをする者にとっての本当の春・解禁と言えそうだ。
あとはライズでも見えれば言うことないが、そううまくはいかない。しかし寒々とした空とは裏腹に、冷たい水の水面でさえ今にもヤマメが飛び出しそうな気がしてならない。そう思わせる虫たちの飛翔だ。
僕に向かって飛んでくる虫たちをよけながらキャスティングする。ヤマメさんも虫を食べるのはやめて僕のフライにしなさい。
よく見るとカゲロウ、トビイロカゲロウだ。それもすごい数。川原の石にもたくさん止まっているし、ロッドやベストにも止まってくる。
その脇の流れにフライを投げるとあっさり出た。これだけすぐ横でカゲロウが飛び回れば、水中のヤマメだっておだやかに泳いでなんていられまい。
そのあともいたるところに蚊柱が見える。川筋のどんなところにも春が来ているようだ。
またフライに出た。今度は空振り。しかしこれだけのカゲロウが出ているのなら、この先もドライフライで楽勝だろう。
そのポイントはほっといて、次へ進んだ。
その時はまだ僕はこの日の釣りがこれから先どんなことになるのか、思ってもいなかった
少し風が出てきた。するとどこからともなくまたカゲロウが飛んでくる。風に流されてくるといったほうがいいか。
またフライに出たが空振り。ヤマメはすでに瀬に入っているようだった。
待ちくたびれました。
この辺りにはまだかなりのヤマメが残っている。餌釣りが苦手とする流れのようでもある。
同じポイントへ流すとまた出た。神経質そうに水を弾いてそいつは沈んでいった。
どうもフッキングしない。ティペットをやり変え、フライも半沈みのパラシュートに変えてみた。
キャストと同時に魚体がひるがえった。ロッドをあおるが掛かる訳がない。
どうもここのヤマメはまだ水面の捕食がうまく出来ないようだ。
フロータントもつけずに投げたから、すぐにフライは沈んだ。
水中でぐるりと魚体が反転、一発じゃないか。
と、フッとロッドが軽くなった。水中でやまめが体をくねらせて消えていくのが見えた。
なんだろう、ずいぶんと調子が悪くなった。僕の釣り方か、ここの魚のせいか。
フライには反応したんだから悪くはないはず。少しポイントをパスして上流へ向かった。
フラットな流れでライズした。先ほどより大型のカゲロウが飛んでいるのが見える。
慎重にライズの少し上にキャストした。身をかがめて見入る。
ニョキッと魚体が垂直に現れた。さっきまでと同じか、と一瞬思ってロッドをあおる。ラインははるか上の木の枝に巻き付いた。
そこから少し先、道路のすぐ脇の流れで最後のヤマメをバラした。その横を釣りを終えた釣り師達の車が1台、また1台と通り過ぎていった。
引き際が肝心だけど(^_^;
