其の百二十六  河川敷に集いし者達、竿を振る(3)
恒例のマエカワロッドの試投会は2003年、2004年と行われて、飛んで2007年とあいなった。
2003年はO川の河川敷で、2004年は市内の川筋の広場で。今回も2004年と同じ広場での試投会だ。
禁漁からひと月半。暑さもようやく消えて、秋らしい晴れの日曜日。そろそろまたフライフィッシングの気配を身辺にまとわらせたくなってきた。実にいいタイミングの試投会ですね、M川さん。
広場に着くと、これまた試投会でしか顔を合わせないT君がすでにロッドを振っていた。
谷あいの渓流でなく、街中キャスティング。
十月中旬。快晴です。
もうひとりFuさんも早くから来ていたようで、試し振りのロッドを選んでいた。
僕も早速何本か振ってみる。ひと月半ぶりだが、その間フライロッドはいっさい振っていない。
なんとなくぎくしゃくしながらバンブーロッド独特の弾性を手に確かめた。
T君はとっかえひっかえ振っている。自前のリールも持参する熱の入れようからすると、このオフシーズンに一本行く気だろうか?
並ぶロッドたち。一本一本違う表情を持つ。
晴れた十月の昼下がり、市内の中心部でロッドを振る。2004年の時も思ったがなんとも不思議な感覚ではある。
およそ釣りとは関係のない街中で、異次元から出現したようなフライロッドにラインに、キャスティングで生まれるループ。
今この場所ではなにも成り立たない行為が、場所を変えるだけで僕達の気持ちを大きく揺り動かすことになるのだ。
不思議と言えば不思議だけど。
ロッドを前に話すことは、そのロッドを使った釣りをイメージして。
実際にいろいろとロッドを振ってみると、一本一本個性というかその振り心地に違いがあるのがよくわかる。そして使う状況もすぐに目に浮かんでくる。このロッドだとこういった場面で。こっちのだとあの川を攻めるのにいいな、とか。
フライを始めた頃は、行く川の規模で、使うロッドの長さや番手、アクションをかなり気にしていた。
年月を重ねるにつれそれはだんだん薄れていった。一本のロッドで多くの場面をこなしてしまう、そんなロッドに出会ったからか?
キューティクルがつややかなT君。
一本で全ての状況もカバーするという訳にはいかないが、気に入った一本はいつも釣りに使いたいものだ。この日試し振りしたロッドの中から自分にベストの一本を選ぶというのはセレクティブなライズを取るよりも難しい事かも知れない。

釣りは竿に糸をつけて鉤に餌をつけて。当たり前の形式なのだが、この日の河川敷は竿に糸までは同じでも鉤や餌はついていない。
すぐ横では大通りをひっきりなしに車が通り過ぎる。
そんな中でもこんなに繰り返し竿を振る訳は、振る竿から繰り出される糸の先に来年の解禁の釣りが見えているからだ。
小春日和のこの日の天気はまさに春先の穏やかな日を思わせた。
それがいっそう来シーズンの解禁を強く呼び起こすようでもある。あの春の陽気と半年振りの川の新鮮さを。
僕も来年の春をめがけるようにキャストしました(写真撮影 T君)。