其の百八十二  放流会連続参加更新
霧の峠を越えるとスカッと晴れてきた。
山のことだからとフリースを着てきたのに、これは着てられなくなりそうな、そんな予感がした。
今年で何回目になるのか、連続参加も途切れていない、恒例の放流の日がやってきた。

紅葉もピークをちょっと過ぎたくらいで、一番の見ごろのようだ。集合場所の道の駅にも紅葉目当てのたくさんの車が停まっている。
この北部地域が一年で一番にぎわうのがこの時期だ。
行けって言うのに、なかなか出て行かない。
放流エリアは僕が釣りに通うほとんどの川を含む漁協の管轄だ。
放流場所は通い慣れ見慣れた景色の川だから、どこがどんなふうか熟知している。
集まった人々は初めて見る人やいつものメンバー、この放流でだけ顔を合わせる人と、様々だ。
逆に放流で会えると思っていた人が来ていなかった。
これは残念。
放流はヤマメに会いヤマメを川に放つだけではなく、人に会うのも目的になっていた。
バケツに入るのはヤマメか、来年への期待か。
放したヤマメを見送るのも楽しみ。 mGはすでに解禁が待ちきれないと行った様子。
放流したヤマメが流れの中にとどまっていると、なんだかそれに見入ってしまう。
自然の川でこんなに間近でゆっくりとヤマメをながめられることってなかなかない。
水底の落ち葉の下に潜り込むやつや流心をすいすい気持ち良さげに泳ぐやつ、ライズするやつまでいる。
なんだか見ていて見飽きない。それでも次のポイントへ移動しなければならず、僕は水辺をあとにしつつ、でも何度も振り返ってヤマメの姿を追った。
放流したヤマメを上から見送る。
通い慣れた馴染み深い川へ放す。
シーズン中もこんなにいたらなあ。
それぞれの思いをヤマメに乗せてσ(^_^;)

キャンプ場へ到着。
どうやら僕たちのグループが一番遅かったようだが、じっくり放流を楽しんでこれたということだ。
さて、腹も減った事だし昼ご飯。そしてビンゴゲームへと進む。

柔らかい初秋の日差しが木々の間から射してくる。
敷き詰められた落ち葉を踏む感触が気持ちいい。
話が盛り上がっているのにそんなに騒がしくない気がした。落ち葉と土の地面が音をやさしく吸収しているようだった。
毎回変わらぬこの風景。変わらぬ事に価値がある。
白「ウィンストンのロッド、取られたよ」
黒「なぬ〜っ! マジ〜っ!?」
このループを見よっ!!
実際放流でヤマメを放したポイントに、春まで留まっているということはあまりないだろう。
同じ区間にたくさん入れたように思うが、きっとなんとかうまい具合にばらけて、それぞれに自分の落ち着く場所を見つけてくれるだろうと、mGがヤマメを見送りながら言った。
そうやって、自分の好きな川の隅々へとヤマメが遡っていくのを想像するとなんだか楽しい。
これからきびしい冬を越えて春を迎え、解禁後の釣り人の鉤をかわし、なんとか自分のフライに食いつくまで残っててくれたらと、我ながら自分勝手なことを考えているなあと思う。
そのルールにのっとった勝手が楽しくもあり面白くもある。
放流が済むと、解禁まであっという間だ。