其の百八十七  本で行く釣り旅(3)
オフシーズン恒例の本のまとめ買い、まとめ読み。
と言っても禁漁になってからほぼ四ヶ月が過ぎようとしている。
その四ヶ月の間に、じゃあ本を何冊読んだか? 
うむむ、実に0冊。時間があれば読むというもんでもないのか。
逆に雑誌のたぐいはずいぶん買って読んでいる。パラパラっとめくれて飛ばして読んだりできるところが気楽でいい。
もうすぐ連休だから、どっぷり読書週間ということで、本を準備しないとな。
新刊も結構前に出た本も、取り急ぎそろえて。
釣りの本の中には釣行の様子を書いたものを集めたものがある。
ひとりの作家の書いたものや、複数の書き手の短編を集めたものもある。どちらもおもしろく、それぞれのリズムで読める。
書き手によって、小さな釣りの文章も実にいろいろな趣が生まれて、それを読む僕にも少なからず影響が出てくる。例えば来年の釣りを想像する時の、気持ちの昂ぶりの燃料になるような、そんな感じだ。
本の中でも舞台となる渓や山は行ったことのない場所のはずなのに、ページをめくるにつれその場所があたかも見た事があるかのように頭に浮かんでくる。
本に描かれるいろんな川は実在の有名河川であったり特定できない書き手の思い入れのある川だったりするだろうから、頭に浮かぶ様子は書き手の描写にゆだねられる。
さすれば今度はこちらの番、うちらの川だって良いところがあるんだよ、と地元の川を想像するわけだ。
本でその川を疑似体験したあとは正真正銘の自分の釣りの記憶が明確に蘇ってくる。
まずは来年の解禁はどこの川へ行こうかとか、一番いい季節はやっぱりあそこは外せないとか。
本を読む事で今年の釣りの記憶が掘り起こされ、来年への期待を込めた想像がかき立てられるようだ。
新刊も結構前に出た本も、取り急ぎそろえて。
こんなふうに禁漁期間に本や頭でイメージが膨らみ、それが来年の解禁へと圧縮されて向けられる訳だから、待ちに待った解禁ということになり、それは印象深いものになるはずだな。
まるで禁漁の間の本は、解禁で高くジャンプするための、勢いをつけるため低くかがみ込む動作のようだ。
本の中の面白く気持ちよく素敵な釣行を読むと、それに負けない釣りをしたいと思う。
そこは本になるくらいだから、魚のサイズとか数とか川の規模とか、おいそれとは追いつけない内容ではあるだろうが、釣りの面白さはもちろん数字的なものだけではない。
まずは釣れなきゃあとも思うのだが、記憶に残る釣りは大物や数を釣った時ばかりとは限らない。
そんな釣りを来年もできたらと、願いを託すかのように、ようやくこのオフ一冊目のページをめくった。