其の百九十三  隙間のないフライボックス
解禁を前にそろそろフライを巻くかなあと思い始めるのが、だいたい一月の下旬くらい。
これから解禁までのひと月で巻くのは、単に解禁後最初の釣行のためのフライ、という訳ではないが解禁最初の釣りは重要だ。
最初の釣りで後悔しないために、必要になると思われるフライを万全の体勢で巻いておく。
二回目以降はまああるフライでなるようになる、という感じだ。
自分にプレッシャーをかけることになりかねない気もするが、解禁に備えたタイイングは、春の恒例行事だな。
十年はつかったかな。このフライボックス。
新たなシーズンに備えてのタイイングならやっぱりフライボックスが必要だ。
もちろん今まで使っていたもので十分。なぜならそこに新しいフライを入れる空きスペースは十分にあるからだ。去年の春にはいっぱいにしていたかも知れないが、釣りに行って中身が減る方が、あとから巻き足すよりも大幅にまさっている。巻いても巻いてもどんどん減っていくのだ。
フライボックスといってもそこはいろんな種類があるわけだが、僕はフォームの敷いてあるフライボックスを使うことが多い。
以前はホイットレーのアルミのフライボックスがいいなと思っていたが、コンパートメントのやつはフタや開閉機構があることも相まって、結構重い。そうなると樹脂製のものが重量では軍配が上がる。
しかしホイットレーも捨てがたい。
そこでフォームの敷いてあるフライボックスということになる。コンパートメントのよりは少しは軽いだろうということだ。
重量から入ったフライボックスの好みだが、実際にフォームのものを使い出すと、これがなかなか勝手が良い。
コンパートメントだとどういうフライがどれくらいストックされているのか、今一つ把握できない。なんとなくはわからないでもないし、ちゃんと開けて中身を出してみてみればわかる話だが、わざにそうしようとしないといけないというのがちょっといただけない。
その点フォームだとふたをあけたら一目瞭然。
あれがない、とわかれば巻く気も促進されよう。
やっぱりコンパートメントも要るよなあ。
ハックルとかの形状の関係でリップルフォームでもフラットでも難しいフライもある。
だからコンパートメントのものもやっぱり外せないボックスではある。
フォームに敷き詰められたフライを見ると、戦闘態勢にはいってるな〜っていう気分になる。できれば隙間なく、というのが好ましいが、なかなかそうはいかない。
でもせめて解禁くらいはびっしりのフライボックスを持って出掛けたい。
巻いても減らないオフシーズン、今しかそのチャンスはないな。
パレットのようなフライボックス。
タイイングはここにフライを描くこととも言えるなあ。