其の百九十五  小型フライの誤算
毎週少しづつタイイングをして、新しいフライがフライボックスを埋め始めた。
いやいや、なかなか順調ではないか。自分でもこれほどタイイングに集中できるとは思っていなかったから、意外なまでのフライボックスの充実振りだ。
埋まっていくフライボックスにもそれをこなす自分にも十分満足していた。
フライがないことを釣れない言い訳にさせないためにも、解禁前くらいはしっかりと巻きためておかないとな。
タイイングペース加速。しかし問題発生!
フライボックスのフォームにフライを差し込んでいるうちにふと気が付いた。いや、気が付くのが遅いか。
ドライフライもニンフも同じような大きさばかりだ。だいたい#12前後、といったところか。
まあ改めて驚く事でもない。僕がタイイングで巻くときのフックサイズの決め方は、僕が巻きやすいサイズ、ということでしかない。
タイイングも楽しめないと、と勝手に思っているので、気持ちよく巻けるサイズとなるとどうしても大振りになってしまう。
フライボックスの中に小さいフライが少ないなあと思っていたが、見て見ぬふりをしていたというのが正直なところだ。
小さいサイズは何年も前に巻いたものをフライボックスに入れている。使う頻度が少ないからそれで事足りていた。
実際小さいサイズのフライを使わないと釣れない、ということはあるだろう。
しかし小さいととにかく見えないのだ。見えないと魚が出たかどうかもわからない。だから自然と大きな見えるフライを使う。それで出ないならそこに魚はいない、と思って釣りを続けていたのがここ数年のことだ。
果たしてそれはどうなのか?
パラシュートですら、ヒーヒー言いながら巻いてます。
見える見えないもあるが、釣り方そのものも思い込みでやっていることもきっとある。
自分の釣りを見直さなければならないかもしれないなあ。そのためには小さなフライもきっと必要になる。
せっかくタイイングの調子が出てきたんだから小さなフライも巻いておこうと思った。
まずは#14。ここで僕はがく然とした。
なんと#14のフックの小さいことか。#14をそう感じるということは、もう一年以上#14でフライを巻いていなかったのだろうか?
そして一本巻いてみたのだが、これがなんともバランスが悪い。巻いている途中から(こりゃダメだ)と思っていた。同じパラシュートを同じバランスに違うサイズで巻く? なんかそういうことをすでに忘れていた。これじゃあ#16とか#18になったらどうなるのか? もはや僕にはそういう小さなサイズのフライを巻く事ができないのではないか、と思った。
僕はまた、同じサイズのフライの並んだフライボックスを見て、もうすぐの解禁にいささか不安を覚えた。