其の二百二十  再び、島へ
山の天気は変わりやすいと言うが、海も変わりやすい。船で海へ出る訳ではないので、海の天気の急変の洗礼を受けるのは島にいる時になる。
あと少しで2mに達しようかという北部の積雪とは無縁のような冬晴れの島。橋をふたつ渡り継いで最初の漁港に車を停めた。
時折冷たい風がゴッと吹くが少し経つと収まり、またしばらくするとゴッと吹く。陽も射したり陰ったりでどちらかというと荒れてるなー、これは。
風強し。#6ロッドでよかったー。
なにかこの光景、見た事がある。いつだったか、なんだったか。既視感なんてそんなには珍しくはないが、これはなんだったか。
水面のこの感じ。すごく身近で自分にとってあってほしい光景、あって当たり前のもの。それがなぜ今か?
いや、よくぞ今、よくぞここでこの光景に出くわした、そういう気持ちが1秒の間に何回も繰り返される。
身近でありながら懐かしい、それは・・・なんだったかなあ。
う〜む、海はこんなに広いのに、魚はどこかいな。
港の防波堤はそれでも入る所がないくらいに釣り人がひしめいていた。
いや、正確には釣り竿がひしめき合うように立て掛けられていた。釣り人は防波堤の陰に座り込んだり車の中で待っているようだった。
防波堤の外側は話にならないくらい波立っているので、内側で足下にフライを落とした。
例によって船と船の間の狭いところに小さな魚が見える。フライに寄ってはくるがすぐに見切られてしまう。
潮も満潮になった。タイミングも悪い。
雲も吹き飛び釣る気も吹き飛ぶ(^O^;)
「何が釣れる?」ふいに後ろから声がした。みるとおっちゃんふたりが釣りざおを持って僕のフライの落ちたあたりを見ていた。
「メバルでも釣れたらって思って」と言うと「ここらは小さいのしかおらんよ」と言ってふたりは浮き桟橋にかかる橋を渡った。
小さいのしかおらんと言いながらこの場所で釣りを始めるようだ。ふたりは並んで箱に腰を下ろし、仕掛けの準備を始めた。なにやら笑いながら話をしながら、仕掛けを投じた。
歳をとってもああやって友達と釣りをする。うーん、いいね。あれくらいの歳になってもああいうふうに釣りができたらいいなあ。
次の場所を求めて車で移動した。この島は釣りで来るのは初めてだったから更に先に良さそうな場所があるかどうかはしらないでいた。
何ヶ所かで竿を出してみたがいまひとつパッとしない。なにより風が強い。そろそろ雨か雪が降ってきそうだ。
島の南端までいくつもりだったが、途中から先は道路に立ち入り禁止の看板が立ててあった。
その先は私有地のようだった。
看板の手前で海にフライを投げたが、良さそうな場所でもないし、一投でやめてしまった。
膠着状態をどう打破するか?

結局最初の港に戻ってきた。さっきのふたりのおっちゃんはまだ釣りをしている。見ているとひょいとなにか魚を釣り上げた。
あたりにはさっきいた釣り人はあまりいなくて、さっきまでとは別の釣り人がちらほらと増えているようだ。
風はまだ止まない。
また防波堤の内側で投げてみるがウンともスンとも言わない。
どうするか、今日はもうダメか、と思い始めた。
ダメ元で防波堤の外側にフライを落としてみた。
ゴールデンタイム、突入!?
明らかに魚たちの活性が上がっている。潮が引き始め、夕方も近づいていた。
沈んだフライの横でメバルがライズを繰り返している。
フライにほかの魚は近づくが食いつくことはない。
フライをピックアップするとビニール袋が釣れた。外してまたキャスト。フライは沈んだ。
何度目かのキャストをした時、フライの着水と同時に水中の奥からフライに突進する魚影が見えた。
ああ、フライに魚が出るのを真上から見るとこういう感じなんだ、と僕は1秒の間にそんなことを考えた。
今回は釣りが成立しましたσ(^_^;)
リーダーリンクのところで何か弾けた。
(そうそう、渓流釣りだとリーダーリンクやマーカーにヤマメが出たりするのよ)
ん? 出た? 何が? よく見ると水面で何かパシャッとしている。
メバルのライズだ。
目を凝らして真下の水中を見るとたくさんの小魚が泳いでいた。今までいったいどこにいたんだ、こいつら。
フライはアイが重たいから沈んでいる。僕は急いで一番小さなフライに付け替えたがこれも重たいアイが付いている。アイを引きちぎったらスレッドがほどけてしまうからこのまま使うしかない。
こんな時ドライフライがあればなあ。またキャストしたが、フライは着水してもすぐ沈んだ。