其の百十二  ガードヘアのなせる毛鉤
正月が過ぎたらそろそろかな?
そろそろですな。解禁まで。
まずは一匹釣らなければならない。最初の一匹はナンといっても特別だ。その一匹のために、ちょっとは気合いを入れて毛鉤を巻く。
三月、まだ春浅い里川でなにが効くのか。雪の状態にもよるし、釣行の前の日の天候もキーになる。
解禁直後だからと言ってすぐニンフというのも短絡的だし、雪の中でだってちゃんとドライで釣った経験もある。
ま、そう言いながらシャンクにウェイトを巻き付けてるのですが(^_^;
アンダーファーとガードヘアのブレンドは造形にめりはりを生む。
さて、やっぱりニンフを巻くのだが、ニンフの場合はボディマテリアルが主役と言ってもいい。
ダビング材をあれこれ試したりもしたが、やはりヘアーズイヤー(&マスク)がしっくりくる。
ここで僕がこだわるのはガードヘアだ。ファーは当然うさぎのマスクのコンプリートを買う。だからどこのどんなファーを切り取ってどう混ぜて使うかは自由なのだ。アンダーファーとガードヘアを混ぜることは、単にきめ細かいダビング材だけでボディを巻くのとはかなり違った仕上がりになる。
柔らかいアンダーファーの中に硬質なガードヘアが見え隠れすると、その質感のコントラストが生命感を醸し出す。水中でのそれは更に、である。
スーパーファインなんかの密に巻くダビング材と違って、ヘアーズイヤーのファーは結構ラフに巻くので乾いている時と濡れている時との印象はかなり変わる。
特にアンダーファーは濡れるとふわふわの繊毛がぴったりと貼り付いてしまうので、張りのあるガードヘアだけがやたらに目立つようになる。
ただそれは濡れた状態を水から出した時の見え方だから、実践での水中ではアンダーファーとガードヘアがなんともなまめかしく揺らめき絡みあっている、という感じなんだろうか。
一度濡らして水気を切ったあと。アンダーファーのふわふわが消えてガードヘアが目立つ。
ガードヘアはアブドメンには少なめに、ソラックスには多めに混ぜている。不規則に突き出した堅いヘアはやはりレグをイメージさせるのに好都合だ。
フェザントテールやピューパパターンなどはこういった巻き方はない。水生昆虫の本などで本物のニンフを見てみると、カゲロウの幼虫を模すにはヘアーズイヤー系ニンフは正解なのだなと納得できる。リアルに模倣している訳ではないのだけれど、良く言われる「状態」を現わしているのだなと思う。
マテリアルでガードヘアを意識した製品はあまり見かけない。ヘアーズイヤーのブレンドの小袋も一本一本の太さのばらつきを押さえたファーにそろえて詰めている感じだ。ガードヘアをメインにした製品があっても良さそうなものだが。

「ガードヘアなくしてニンフが巻けるか」とは極論だが僕の好みで言うとそうなる。
カゲロウのニンフに関してはヘアーズイヤー系のマテリアルで巻いた毛鉤は僕にとって必携なのである。
そしてそのタイイングのミソはやはりガードヘアになるのだ。
でもなぜかニンフはオフシーズンにしか巻かないのです。