其の百十三  あした、ゴギのたゆたう
この魚の棲む川は山は、きっと平和なのだと思うのだが。
フライで初めてゴギを釣ったのは、いつだったろうか?
確か西の山の水系の源流に近い川で、だったはず。その川は今ではあまり行かなくなったが、元気なゴギを育む川だ。たまに気負わずにのんびりロッドを振りたい時には出掛けることもある。
ゴギの棲む地域に釣りに行けて良かったなって思う。この魚を釣ることが、僕の釣りの楽しみをずいぶんと広げてくれている。
渓流でヤマメかアマゴだけだともうひとつ物足りなかったかもしれない。釣りは釣り人の方だけでは当然成り立たない。ゴギさんありがとう♪ヽ(^-^ )
ゴギの棲む川を思い浮かべると、それはかなり限定されてくる。
初めてゴギを釣った川、もっと奥地へと分け入った小渓流、一気に標高を上げていく険しい地形に守られた川。
いずれもヤマメの川よりも更に足を伸ばす必要があり、ゴギに逢いに行くのには特別な場所へ赴くという印象がある。

ゴギを釣る季節もそうだ。
解禁当初に釣った経験もないではないが、やはりシーズン盛期がゴギの季節だ。
特にヤマメが神経質で釣りにくくなった頃、釣り人の方も暑さにバテて釣りがしんどい季節には、ゴギを釣りに行くことがなによりの燃料補給になるような気がする。
肩の力を抜いて、渓や魚に向き合える事が出来る、そんな釣りになる。
ニョロニョロとした動きはヤマメには見られないもの。
フライフィッシングはテクニックを駆使することが、この釣りの面白さに奥行きを与えている。それには結構シビアなものを要求されもするし、自分の側の技術だけでなく、釣り場の条件や環境を読み取る力も必要となってくる。真剣に取り組まなければなかなか上達するものではない。
しかし、フライロッドを持って週末に山へ出掛けるのは、そんな自分の釣りの鍛練のためというよりも、やっぱりリフレッシュというか気持ちを和ませてくれるようなものを求めて、というのが本当のところだ。
いつも気を張りつめてばかりだと疲れるしイヤになったりもするし、いつも和んでばかりだと魚が釣れなくてなにしに来たんだかわからなくならなくもない。
そのバランスをゴギという魚がうまくとってくれているような気がする。
逆に釣る魚がゴギだけだとそれもやはりつまらない。ゴギを釣ったりヤマメを釣ったりが楽しい。
ひとシーズンを通してではやはりヤマメの方が数を釣っているだろう。
場合によってはゴギの大釣りをして、それまでの釣行のヤマメの匹数をたった一日で上回ることもありえなくはないが。
そんな代わる代わるの釣りの主役は、その都度その時の僕の釣りを満たしてくれる。
(釣れればだけどσ(^_^;))

僕は日本のもっと東や北とか、海外とかにはどうもあまり食指が動かない。
まあ、行けば行ったで素晴らしい釣りが出来るんだろうけど、今のところはゴギとヤマメとアマゴの棲む、自分の暮らしに近い山や川へ出掛けるのがなによりの楽しみだ。