其の百十五  水の上に在りしもの
ガンガン流れのある場所での微妙で繊細なドライフライの浮き方は、果たして(釣り人の)その思いがどこまでヤマメに通じているのかいないのか。
しかしながら、流れのない止水での浮き方は伝わって欲しくないところまで伝わってしまうのが、フライフィッシングの常である(?)
渓流の釣り上がりのスタイルが多い僕の釣りでは、止水で勝負しようというフライは、まあCDCダンとスペントパターンでも巻いとこ、くらいにしか考えていない。
果たしてこれは的を得ているのかしら?
水面にぽっこり、マエグロのダン。アメンボスタイルの浮き方で踏ん張ってマス。
ただ止水とは言ってもライズがあればそれだけで優先権を握ったような気にはなる。そうなりゃ、そのときティペットに結んだままのフライでも平気で投げてしまうという横着さ。
しかし止水でのドライフライの浮き方を知っていてであるのなら、別に横着とか怠慢とか言われる筋合いはないよね?(??)
上の写真のマエグロのダンは六本の足の先だけで水面に浮いている。ん〜、実際にはお腹も水面に着いているのかなあ。もともと石面羽化のマエグロだから水面には不慮の事故で落ちたのだろうし、羽化した時点では水面の安定した浮き方の知識も経験も持ち合わせはないと考えるのが普通だ(ナニの普通だ?)
スタンダードパターン。ハックルとテールで浮いている。 エルクのようなパターンは最初はボディハックルで、のちにウィングで浮く。
それでも水の上に落ちた水生昆虫は、本能的に水面での姿勢を安定させようとするために無意識にバランスを取るのだろう。それが、フライを水面に落とした時と同じようなバランスというか姿になっているのならしめたもの。いや、それを狙ってタイイングしているはずだったっけ?
いくつかのフライパターンを水に浮かべてみると、まあそれなりにそれらしい感じはしているかな。テールが接するかどうか、ボディが接するかどうか、実際にはいくつもの浮き方があるだろうからちょっと試しただけでは広範囲で検証したことにはなるまいが、見当外れではないことは検証できたかな。
パラシュートパターンの安定感は予想通りで、ドライフライとしての浮力の機能は堅いなあ〜って思う。
しかしそうは言ってもこんな形の虫はいないような気もする。
スタンダードやエルクヘアの方が、浮き方としては虫っぽさがあり得そうな感じだ。
パラシュートが有効なのは、なんか水面で虫がじたばたしているような状況に近いからなのかも(だんだん想像が膨らんでいきますが・・・。)
やはり安定した浮き方ではパラシュートが抜きんでている。
CDCダンに至っては、水を入れた容器に浮かべただけなら、その時点ではほぼボディとテールだけで浮いている。着水初期ではまだCDCの力を借りるまでもないという感じだ。
それはCDCダンそのものの軽さというか構成するマテリアルの少なさによる総重量の軽さがもたらしているにほかならない。
きっとそれはほかのパターンを巻く時にも言えることなんだろうなあ。
僕の巻くフライはちょっと余分に脂肪が付いているっぽいですなあ。
きっとこれならウィングを取り付けないでも、浮くことは浮くはず。まあじきに沈むでしょうがね。
止水での浮き方が本物に近いフライなら、流れがある場所でもその流れに呑まれても、そのフライは流され方が本物に近いということになればしめたもの。
もちろんどんな状況にも一本のフライで対応させるのではなく、スポット的に状況を絞って使い方を限定したパターンもあるのだから、そんなバリエーションで巻き分けるのもタイイングの楽しみでもある。
そしてそんなフライが見事にヤマメを誘ってくれたのなら、夜な夜なのタイイングのし甲斐があるというものですが・・・。