其の百二十四  カーフテールの復権
釣具屋をのぞいたら珍しくカーフテールが入荷していた。
そういやもう何年も使ってないね。パラシュートのポストとかもいつの間にやら使いやすいエアロウィングばっかりになっていたな〜。
部屋にはまだ使いかけのカーフテールがある。いっちょう帰って使ってみるか。
思えば僕がフライを始めた頃は、ポリのファイバーの製品はあったがエアロウィングはまだなかった。だからパラシュートのポストと言えばカーフテールだったなあ。
毛足が長くて縮れの少ないものが扱いやすい。
カーフテールは使いにくいイメージがある。
まず切り取ってスタッカーに入れる時点でめげる。スタッカーに入ってくれないのだ。縮れているから無理もないが、切り取ったうちの三割は捨ててしまうことになる。そしていくらスタッカーをトントンしてもきれいにそろわない。そろい加減はどこかで妥協しなければならなかった。
次に巻き止めるところが太くなるという点。エアロウィングのように中空ではないからスレッドで強く巻いて圧縮しても限度がある。どうしても巻き止めたところが太めになり、はさみで斜めにカットしてもフックシャンクから一段高くなってしまう。
ここはボディ材でうまくごまかすしかないかなあ。
しかしなんとか巻き止めてハックルを巻いて出来上がったパラシュートは、やっぱりシンセティックのポストよりは格調高い出来映えになる。
そうなると不思議なものでカーフテールの方が良く釣れるような気さえしてくる。
きっと直接的なフライの出来映えだけでなく、その完成度が間接的にもたらす効果がいろんなところで出てきて、釣りをイイ方向に導いてくれるのかも知れない。
そんな細かな要素の積み重ねもフライフィシングなんだな、きっと。
なんとかスタッカーにねじ込んだら、あとはひたすらトントンする。
今年だったか去年だったか、フライボックスの中にカーフテールを使ったパラシュートを見つけて、それを使って釣りをしたことがあった。
そのパラシュートは#16くらいで、カーフのポストも細くてなんとも心細いフライだった。それでもその時はそれで行こうと思った。キャストして驚いた。小さく細いカーフテールのポストがとても良く見えたのだ。ただの白い獣毛のはずがなんとも強い存在感を醸し出していた。
更にはこいつが沈まないのだ。吸水性の少なさと言うか繊維の張りの強さなのか、頼もしい浮力をいつまでも維持してくれた。
視認性と浮力。ドライフライでこの二つがそろえば強力だ。それがあることで、釣り人はより釣りそのものに集中できる。
自信の持てるフライを結んでいることが、いい釣りをする条件でもあると思う。

手軽なシンセティックも良いのだけれど、少し手間をかけてこんな獣毛のマテリアルを使ってフライを巻くのも、そしてそれを釣りで使うのもフライフィッシングらしくていいなあって思うのだ。
アダムスパラシュートにはやっぱりこいつが似合う。