其の百二十七  水辺の近況 「落ち葉拾い、ヤマメ探し」
ハードディスクの日付別の画像フォルダを見ると、一年前の今ごろに何度かヤマメのペアリングの見にいっていることがわかった。
時期はちょうど今、紅葉の走りの頃だった。また見れるだろうか。
僕はカメラとミニ三脚をバックパックに詰め込み、車に乗り込んだ。
外は穏やかな秋晴れで、なんだか簡単にヤマメが見れるような気がしてきた。
しかしインターチェンジを降りると空はどんより曇って、今にも雨が降り出しそうな気配だった。
どよ〜んと浮いてます。こんなサイズ、釣りでは見たことないなあ。
去年のペアリングの谷に着く頃にはぽつぽつと雨が落ち出した。
谷の入り口にあるレストハウスの駐車場に車を滑り込ませ、すぐに川を見てみた。
ヤマメはおらず、はらはらと落ち葉が舞うだけだった。
木製の橋を渡った。濡れた落ち葉が木の上にあると滑りやすい。
気をつけて渡ると下の川に白いものが移動しているのが目に付いた。
よく見るとそれは何かの幼虫のようだった。それを小さなヤマメがくわえて泳いでいたのだ。
色づいた葉も雨でしっとり濡れている。
およそ魚体とはバランスのとれていない大物のイモムシをくわえたヤマメは、ゆるい流れの中をうろうろするだけだった。このままだと窒息するのではないか? しかし野生の本能が食べ物を吐き出すことを許さないのか、いつまでもくわえたまま泳ぎ続けていた。
急に強い風が谷あいを走り抜けていった。何枚もの赤茶けた葉が宙に舞った。川の流れにもたくさんの葉が落ちた。
流れる葉を目で追っていると、その下を大きな影がスッと通過した。
ヤマメだ。でかい。
「一人じゃ寂しいわあ(>_<)」 「やったあ、初デートです(^_^)」
「がお〜(`o´)」 「なんだこいつら、じゃますんな〜(`_')」
やはりこの時期のヤマメときたら、相手探しの争奪戦が激しい。ペアの雌に近づくほかの雄を猛然と追い払うペアの雄。それはもうひっきりなしで、見ていてもキリがない。
ちょっかいを出すヤマメも一瞬のチャンスを狙って子孫を残すための勝負に出ようという腹づもりだから、おいそれとは引き下がらない。何度追い払われようともまたやってくる。
ひとしきりそんなヤマメの営みを眺めていたら、ばらばらと雨足が強くなってきた。
ぶるぶるで産卵床を掘ります。
反り返る魚体にパーマークが輝いてます。
落ち葉がいくら流れても気にもかけなかったヤマメ達だが、冷たい雨が落ちてきたら、一匹づつ姿を消していった。産卵に水面上の雨降りが関係しているのだろうか。
きっとあと数日で産卵が始まり、またちびヤマメ達が流れを泳ぎ回る。そんなヤマメ達を育む生きた川にこそ、僕は出かけたい。もちろん来年の春はロッドを持って。

ちょっと目を離していたら最後まで見えていたペアの二匹も見えなくなっていた。
落ち葉の積もる橋の上からヤマメを探す。
未練がましいですが・・(^_^;