其の百二十九  放流会四方山話
見上げると枯れ葉は上昇気流に舞いあげられていて、いつまで経っても落ちてきそうもない。
厚い雲の隙間から青空が見え隠れしているが、スカッと晴れる感じではないなあ。
恒例の放流会に今年も参加。猛暑の夏から二ヶ月が過ぎ、果たして今時期の気温が正常なのかどうか。怪しむ気持ちをぬぐえないまま集合場所に着いた。
外に出ると普通に寒い。あ〜よかった。しかしほどなくして大粒の雨が落ち出した。
ちっとも良くない〜。
早朝、集合場所に到着するやいなや、#10ロッドを降り始めるFM君。恐れ入ります(^_^;
Yとその長男K.b、長女K.nと僕。僕の車に四人乗ったのはおそらくこれが初めてだ。放流の間中K.bは車内で眠ったままだった。
日曜日の早起きと車内の適度な揺れと振動。わからないでもない。
今年の釣りはYもK.bを連れて、結構行ったようだ。K.bとはキャンプの時に何度か一緒に釣りをしたが、ついに彼も渓流の早い流れでヤマメをキャッチしたのか。時の流れも早いねえ〜。
養魚場でトラックにアマゴを積んで、紅葉の川へ向かった。
放流ポイントへ移動。北へ向かう。
軽トラのタンクへドバドバ移します。
多くないかあ〜?
いよいよ自然河川へ。緊張の面持ちでスタンバイ中のアマゴ様。
放流の様子は参加したみんなが各々デジカメやビデオで撮影している。
釣りの時でもそうだが、いまやカメラもかなり手軽で身近なものになった。この日の僕の参加した河川のメンバーはみんなカメラを手にしていた。こうなると片手にバケツ、片手にカメラでかなり忙しい。僕もアマゴを流れに放したあとファインダーをのぞいたが、その中には必ずカメラを構える人が見えた。

河原から土手をよじ登って道に上がるとき、毎回参加メンバーのFM君がぽつりと「ウェーダーをはいていないとバランスが悪いね」ともらした。
なるほど、ホントだ。シューズのソールのグリップ力の関係か、ウェーダーをはいた時に薮を歩く遠慮のなさがGパンだと心もとないからバランスを崩すのか。いずれにしても歩きにくい。
ウェーダーにウェーディングシューズ、片手にロッドといういでたちでバランスを取ることに慣れきってしまっているのかもしれない。
別の場所に移動した。
車の中のK.bはやっぱり出てこない。この流れは春先によく来た川だった。来年もよろしくと、バケツを水にひたしていると、またFM君が苦笑いをしながらこちらに向かってきた。
「放流したアマゴを岩陰からでかいゴギが出てきてくわえて行った!」
「なぬ〜!!」
そうかあ、そういうこともあるよなあ。それで来年そのゴギが釣れるならいいんだけど。
・・・そうはいかんのよね。
水辺の写真家に挟まれて、遠慮気味にアマゴを放します。
さらに川を移動。その道すがらYは「ここはでかいのがおるで」とか「あそこの支流が増水したとき良かった」とか教えてくれる。
ふむふむ、やっぱり放流に来たら釣りの話がしたくなるよね。
僕はその話をロディアのメモパッドにしっかりと書き込んだ。
どの川のどこが良かったかとかは、頭の中にしっかり記録されていると思いがちだが、釣りシーズンになると案外忘れてしまっていることが多い。
「書いて残す」は良い釣りの基本だな。

無事放流を終え、ランチ会場のキャンプ場へ向かった。天気はなんとか持っているようだが、風がある分やはり寒かった。
ランチでは久々に顔を合わす仲間と話が盛り上がる。
ここでようやくK.bも車から降りてきた。改めて見ると彼も大きくなった。やっぱり時の流れは早いわあ。
落ち葉の積もる水辺でアマゴを放す。こころなしかアマゴも紅く染まっているような。
夏に川でばったり会って以来のW氏も来ていた。W氏は最近ある川で尺ゴギのペアリングを見たらしい。
尺ゴギかあ、ヤマメのペアリングしか見たことないからなあ。
見てみたいなあ。

話に盛り上がる仲間を見ていると、この日の目的が放流なんだか話をすることなんだかわからない感じだ。でもきっと両方だな。
料理を食べ始めてほどなく、雷がとどろき雹(ひょう)が降り始めた。放流が終わると、すぐに冬がくる。
雹の襲来に慌てて炊事棟へ避難。
立食とビンゴ大会で盛り上がります。