其の百三十二  ヘンハックルの誘惑
「ヘンハックルでパラシュートを巻いたことあるか?」
M川氏がtsu君に聞いた。
「何匹か釣って、ハックルがヨレヨレになってからが、よー釣れるんじゃ」
tsu君はうなずいた。僕はまたまたロディアのメモパットを開いた。
ヘンハックルかあ、以前は結構使っていたけど、相当ご無沙汰だなあ。
でもあの柔らかいファイバーのもたらす効果はかなりのモンだと思うんよね〜。
久しぶりに巻いてみようか。
メイフライイマージャーとしても有効なソフトハックルパターン。
例えばソフトハックルならまずはパートリッジが浮かぶ。適度な張りと柔らかさを合わせ持っていて、扱いやすい。
ヘンハックルはパートリッジよりも柔らかいと思うが、ファイバー同士がひっついているので、タイイングではそこがむつかしいかな。
でもこの柔らかさは水面や水中ではゆらゆらと揺れていかにもヤマメを誘いそうな雰囲気がある。
もし僕がヤマメだったら、まず食べちゃうな。
コンプリートでもソフトな印象です。
M川氏の言うヨレヨレになってからが良く釣れるっていうのもわかるなあ。
最初はそれでもちょっとは張りがあるだろうけど、何回か流すうちにホントにヨレヨレになってきて、ドライフライならもう浮力が期待できないような感じになる。その状態こそヘンハックルを使ったパターンの真価が発揮できるはずだ。
そうやって考えてみると、コックハックルのパラシュートとかはなんだかびんびんにとんがってると言えなくもない。ヘンハックルパターンを使うことに慣れてしまったらコックハックルがなかなか使えなくなるかもしれないなあ。
タイイングする時の心理ではどうしても良く浮くように、良く見えるようにっていうのが先に立つ。
そうするとハックルは張りがあって吸水性が少なくてって感じでチョイスするようになる。
だとしたらヘンハックルを使うことは、その心理から逆行することになる。あまり浮かなくて、張りがなくて、ヨレヨレで。
でも結局その方がヤマメの心が動くのかもしれない。
それならあとは使いこなす釣り人の腕が問われることになりますな。
ちょっと巻きすぎました。一回転少なくても良かったな。