其の百三十四  海フライを巻く
F氏と会ったのは実に一年振りだった。軽く一年が過ぎてしまう。久しぶりに会った人に対しては、まずそんな印象がくる。
「今は海ばっかり行きよる」
釣り具屋でF氏はそう言った。
そっかあ、海か。そういえばほかの釣り仲間もかなり行っているみたいだなあ。
僕も行ってみようか。でも夜はむつかしいかなあ。寒いのやだし。
などとそんなことを言っていたら海釣りなんてできんわな。
そういや海フライの本、買ったなあ。
海、川を問わずタイイングをするのは、超久々ですσ(^_^;)
帰ってから机の引き出しをごそごそしてみる。
ダンベル型のアイやらボディにまくビニールリブやらが出てきた。
そうそう、ずいぶん前に巻いたことがあったな。シュリンプパターンとか。何回かは夜釣りにも行ったっけ。F氏とも行ったなあ。確か釣れなかったけど。
あの頃はF氏もフライで海の魚を狙っていたが、今はルアーだと言っていた。飽きるくらいに釣れるらしい。う〜む、ルアーかあ。
クレイジーチャーリーのつもり。
うむむ、なんか釣れそう。
瀬戸内沿岸に住んでいて海釣りをしないのはやっぱりもったいないかな。
釣法がフライかルアーかエサ釣りかは別として、空いていたら車でものの10分で海に行けるのだから、やらないテはないんだろうけど。
渓流に足げく通うのは釣りはもちろん、少し足をのばして出掛けることでリフレッシュできるのもある。海だとあんまりにも近すぎて、まあ行こうと思えばいつでも行けるか、って感じでとりたてて本気にならなかった。
フライを始める以前も海釣りはほとんどしたことがなかったのも、目が向かなかった理由かなあ。
帰ってからクレイジーチャーリーを一本巻いてみる。なんとか形にはなったけど、やっぱり巻くだけじゃ面白くない。
フライは釣ってこそのフライだし。
F氏はルアーがいいと言っていた。
それでもいいんだけど、僕がクレイジーチャーリーを巻いた理由は、材料が部屋にあるからだ。
ロッドもリールもある。あらためて道具を買わなくても今ある道具でメバルでも釣れたら、それはそれでフライという釣りの幅広さに満足できる出来事だな、きっと。
フライワレットから出てきたエビフライ。
自分で巻いたかどうか忘れたけど、これも釣れそう。