其の百四十  フライの軽さと重さ
解禁と言えばニンフ、とそう決めつけなくてもいいのだが、それを十年以上も続けていたから、それでないと落ち着かないというか、しっくりこない。
その時の状況でフライのシステムを違えられるのがフライフィッシングなのだから、解禁初日をニンフでと決めつけるのは道理から外れていると言えなくもない。
せめて僕が思うのは、解禁の時はフライボックスからニンフを取り出すような天気や状況であって欲しいという、そんなところだ。
春はシャンクにビーズを通すことから始まる。
仮に解禁で出掛けた川でライズに出くわしたとしたら、もちろんわざわざニンフなど結びはしない。ドライフライでシーズン初ヤマメが釣れたのならそれはそれで大喜びだ。
しかし、解禁最初の釣行で、苦労してニンフで釣った幾度かの記憶は、ちょっとやそっとでは薄れたりしない。半年ぶりでしかも雪がどっさり積もっているような状況で、これまた扱いにくい重たいニンフを駆使して初ヤマメを釣ったのなら、その印象の深さは想像に難くない。
逆にシーズン盛期になってからでは、なかなかニンフを使おうという気がおきない。それ故なおさらシーズン初期のニンフフィッシングに固執することにもなるのだし。
ニンフは何と言ってもその重量でキャスティングがカックンカックンするのが難だ。
これも重けりゃいいってモンでもないだろうが、目的はまだ春に気付かず川底で寝ぼけているヤマメ様の目の前までフライを持っていくことだから、やっぱりある程度の重さは必要だ。
ほとんどフライの重さだけでも飛んでいくほどのフライではあるが、それが効果を発揮した場面も一度や二度ではない。だからやっぱり重たいニンフを巻くのはやめられないなあ。
ワイヤーは鉛を使ってないものを使ってます。
年末年始にバタバタっと海フライを巻いたが、これもまた重い。
タングステンのダンベルアイなどは同じタングステンのビーズの倍は重い(球状のものがふたつとひとつの差は間違いなく重い)。
これを結んで、あさっての方向へ飛んでいくようなキャスティングに比べれば、ビーズヘッドのニンフはまだ楽に感じるかも知れない。
しかしダンベルアイにしてもビーズヘッドにしても、重たいフライを巻く時には重量だけでなく、期待の重さもフライに巻き込むような、そんな意識がいつの間にか生まれているようだ。
重いニンフは、重さが魚を釣るための機能だから、しっかり重くあるべきで、当然ドライフライはその逆になる。
機能を備えた重量は、それを巻く時の季節で異なってくる。
春まだ浅い季節の、ヤマメ達が深いところにいるときはずしりと重いフライを巻き、水がぬるんでヤマメの活性が上がってきたら、軽く快活なフライを巻く。
フライの重さはそんなヤマメと自分自身が季節に呼応していくことにぴったりシンクロしているようだ。
正にビーズヘッドは実弾。
ひと弾ひと弾じっくりと込めます。