其の百四十五  マダラに誘われる魚と人
マテリアルの引き出しの底からCoq De Leon のルースターサドルのケープを引っ張り出した。
引き出しの法則では、底に沈むほどにそのマテリアルは使用頻度が低いことになる。
確か去年かおととしくらいに買ったものだが、買った直後の盛り上がりで何本か巻いたっきり使っていなかった。
なにがあってという訳ではないがそういやあったな、と思い出してみて、改めて思った。
(こりゃあ、いかにも釣れそうな毛ではないか!?)
まじめにバンチウィングなんて超久方ぶり。
釣り人の願望はしっかりと込められます。
なんでせっかく買ったCoq De Leon を使わなくなったかと言えば、使い方のほとんどがファイバーをむしりとってフックに巻き付けるというやり方であるということが原因だろう。
ハックルとして使うなら、通常のコックネックがやっぱり使いやすい。ダウンウィングならエルクやCDCやシンセティックのものが勝負が早い。
なかなかじっくりタイイングする時間が取れなくなってきたから、どうしてもタイイング効率のいい材料に手が伸びてしまい、その結果Coq De Leon は引き出しの底に沈むことになったのだ。
ファイバーをむしって使うものとしては、ウッドダックやグレーマラードなんかのソフトフェザーがあったなあ。
ドライフライよりもウエットによく使っていたが、今ではウエットを巻くこともほとんどないから、こちらも出番がない。
そんなこんなのCoq De Leon だったが、しげしげと見ているとそのマダラ模様は人の目から見てではあるが、魚を誘わない訳がないと思わせる魅惑的な模様だ。
きっとヤマメやゴギだってこの模様を見すごすことは出来ないに違いない。
この濃厚なマダラ模様はソノ気にさせるなあ。
濃淡が交互に並ぶ模様は、例えばカゲロウのボディ。等間隔に区切られた体節は濃い色と薄い色が並んでいる。足にもそんな模様があるカゲロウもいる。羽根だって、メッシュ模様のそれはマダラ模様と言える。
カディスにしても同様だし、こう考えていくとCoq De Leon ほど水生昆虫を巻くのに適したマテリアルはないのではないか、とも思ったりする。
ファイバー一本一本にも光沢があり、その妖しい輝きが魚を誘うのではとも思える。
模様だけではない。ファイバーの張りも強いからしっかり巻き止めれば堅牢性のあるフライに仕上がる。
ちぎれることもほとんどなく、ここもソフトフェザーとは違うところだ。
釣り具屋でマテリアルを買う時にどういう基準で品物を選ぶかと言うと、機能材料は別として、やっぱり人の目で見て(こりゃ釣れそう)と思えるものを買うだろう。
それがヤマメやゴギに対しても人が思うのと同じような効果があるかないかということもあるかもしれない。
でもせっかく自分で時間をかけて巻いたフライで釣るのだから、手がけたフライに自信を持って魚の潜むポイントへ投げるほうが良い結果が得られる。
と、そんな気がしてならない。
カディスパターンもイケる。テレストリアルにも使ってみるか。