其の百四十七  移ろう蚊鉤、六ヶ月 
アイザック・ウォルトンの釣魚大全は、国内でもいくつかの出版社から出されている。
いにしえの釣りの文章は禁漁直後のフライマンの週末の空洞を埋めるのにうってつけだ。
冒頭の序文で鱒の蚊鉤釣りは十二ヶ月の間に十二種類の蚊鉤を使わなければならないとある。
この辺りでは漁期は六ヶ月だから六種類の蚊鉤ということになるが自分の場合はどうだろうか?
この手の本を読むのにこれまたうってつけの雨が降り出した。
いまさらですが釣魚大全を読んでます。
ここ何年もミッジのような極小サイズのフライは使っていない。そういう場面に出くわさなくなったこともあるし、普段使い慣れていないといざと言う時になかなか使うまでに至らないというのもある。
フライフィッシングを始めた頃は解禁当初の寒い頃はサイズの小さなフライを使うものだと思い込んでいた。ろくにキャスティングも出来ないくせに、ロングリーダーロングティペット極小フライで、いったいそれでなにをしようと思っていたのか?
しかも当時はまだ解禁の三月といえばたっぷり雪があった。そんな中で、ティペットが絡んでそれを直してキャストしてまた絡んで、の繰り返し。ようやくキャスト出来ても着水したフライは小さ過ぎて全く見えない。本当になにをしに行っていたのか?
フライはサイズで言うとシーズンを通してあまり大差はない。
#12と#14が大半を占める。もう少し微妙なサイズの差はあるが、それは同じ#12でもフックの種類が違うとタイイング後のフライの大きさの印象が変わるからだ。
ロングシャンクだったりショート、カーブなどのシャンクで同じサイズでも変わるし、同じフックでも大振りにタイイングしたりコンパクトにしたりでも変わる。
だからあまり#16や#18まで使おうとは思わなかった。そりゃ少しでも大きいサイズのフックの方がタイイングも楽だしなあ。
今年活躍のフライボックス達。
一番良く使うところだけ空っぽです。
六ヶ月の中で使うフライで大きく変わるのは、僕の場合は色になる。
三月、淡いクリーム色や黄色のパラシュートから始まって、少しづつ茶系の濃い色やブルーダン系の色になっていく。そして夏の黒へと続く。それはハックルでもボディでも似たような傾向になっている。
あとはその季節ごとの色に対して、同様にパラシュートやスタンダードパターン、フラットやスペントのウィングでと、形を揃えていくだけだ。
釣魚大全の十二ヶ月で十二種類の蚊鉤というのには及ばないが、せめて六ヶ月のシーズンのうち三つの季節の段階で、主に色だけがその時の特徴を現す、というのが今の僕のフライの構成になっている。
なんとなく釣魚大全の書かれた時代だけでなく、僕が春先にはミッジと思い込んでいた頃と比べても、フライのバリエーションの幅が狭くなった気がするなあ。
このオフシーズンはなにかもっと別のフライというか、初心に戻って今のフライボックスを見直してみるっていうのもいいかもしれない。