其の百四十八  最初の道具、現役の道具 
釣り場で使う道具には様々なものがある。フライフィッシングを始めるにあたって、最初はいろいろと道具を買い込んだ。
僕は最初にタイイングから始めたので、まずはひと通りのタイイングツール、マテリアルを揃えた。
そしてひと冬、あれこれと本を見ながらフライを巻きため、解禁を目前にして、また釣り具屋へ向かった。
実釣で使う道具を買うためだ。本をメモしてなにを買うかもしっかり調べてきた。
十数年前は解禁の釣りは手袋必携だった。
何人かの人達の協力を得て、ようやく釣りが出来る道具を全て揃えられた。
フライフィッシングのことだからなにかと特殊な道具も多い。
ロッドとリールとラインはキャスティング練習のためにかなり前から買っていたので、この日に揃えたのは釣り場で使うアクセサリー類だった。それらを駆使して(かどうか?)フライでの初物を手にするまでにはまた悲喜こもごもの出来事があった。
しかし、時の流れとともにその時に揃えた道具は新しい物へと交代していった。
オールドスタイルか最新鋭かと、いろいろ意見が分れるところだろうが、便利であれば新しいものに手が伸びるのも無理のない話だった。
そうやってみると、フライを始めた時に買った道具で今も使っているものはどれだけあるだろうか。
道具を放り込んでいるトートバッグをのぞいてすぐに目に止まったのが防寒用のグローブだった。
これもフライの初釣りに合わせて買ったものだった。
指が出るタイプのものだが、結構くたびれてボロボロになっている。もちろんそのボロボロ具合がいいのだが。
今年も解禁の日にはこのグローブを持っていったが、たしか手にはめることはなかったかなあ。
何百本ものフライを吸水し続けてきたフライカチーフ。
フライを始めた頃よりも温暖化が進み、グローブが必要なくなってきた、とはあんまり思いたくないがそれもあるかなあ。
それでも何年もの解禁初釣りを供にしてきたグローブは、捨てる事も買い替えることも出来ない思い入れが詰まっている。
逆にフライの初釣りから現在まで、全ての釣行で使い続けている道具もある。
そのひとつがT社のフライカチーフで、濡れたフライの水分を吸い取ってドライにする製品だ。これも今ではボロボロだが、一度の釣行にも欠かしたことはない(いや、一度ベストを忘れたことがあるのでその時は使っていないな(^_^;)
フライカチーフに代わる決定的な製品が出てこないこともあるが、これでも性能としては十分だから今でも使っているのだろう。
あともうひとつ、ドライシェイクのホルダーも最初から使い続けている道具だ。
これもかなりくたびれてきた感じだが、それがまたいい。使い勝手も全く問題ない。
ロッドやリールや消耗品は別にして、それ以外の道具は買い替える物ではないと思っていたが、残っているものはわずかだった。
ドライシェイクのホルダーも使い込んだ感が。
ほかにもフライを始めた時からというのでなければ、八年九年と使い続けた道具はいくつかある。
フライを始めた当初は見るもの全てが新鮮で魅力的で、次々に商品を買っていた気がする。そして持っているものでもその新製品が出たら、また買うと言った具合に。
今ではさすがにそこまでではないが、たまに新しい製品が出ると買ってみるかと言う気にはなる。というかそもそもフライ業界もかなり厳しいはずで、これといった新製品もなかなか出てこないのが現状だ。
そんな中でも今日まで使い続けている道具達は、僕にとってはもう釣りには欠かせないお守り代わりになっている。
きっと僕が釣りをする最後の日まで、使い続けることになるだろうな、たぶん。