其の百五十  古今釣鉤様変わり事情
T社から新しいフライフックが発売された(と言っても一年くらい前だったかなあ)。
「日本の渓流に的を絞ったショートシャンク軽量ドライフックの決定版」とうたわれているこのフックは、確かになんにでも使える形状をしているなあ。
このフックの名称を見ると、このメーカーによく似た名前のフックがあったことを思い出した。
どちらも最後に「Y」とついているところを見るとやはりヤマメ釣りを意識したフックには違いない。
釣りから離れてひと月。タイイング再開か?(^_^;
同じ#11で比べると、以前からあった102Yと比べて新しい112Yは、シャンクの長さがちょっと短くなりゲープの幅はほぼ同じだ。決定的な違いはワイヤーの細さだ。比べてみると明らかに細い。
細いと言えば5230というフックもあったが、同サイズならそれよりも細いようだ。
102Yがラインアップされているのに、形状の同じ新たなフックをまた出すということは、このフックの形状が釣りに求められる条件をかなりの割合で満たしているということだろう。そしてそのブラッシュアップ版として、112Yが作られたように思う。
アイの角度が浅くなったのも、細軸以外の変更点だ。
こういうフックの仕様を見てみると、タイイングの仕方もどのようにイメージされて作られたか、想像がついてくる。
びっしりとハックルを巻いたりウィングやレグをたくさんつけたりのドレッシングは似合わない。
最小限のマテリアルでシンプルなフライを巻くためのフックだ。
フライを何年もやっていると、だんだんとタイイングのやり方、使うフライが変化してくる。今回のフックは僕の変化にちょうど合っている。
どれがどのフックか、一目瞭然。
タイイングを始めたばかりのころは、本を見ながらバランスやらなにやらとかなり気を使って巻いていた。
それがタイイングを続けていくうちに自分なりの癖やら各方面から得た知識で、自分流のタイイングが確立されていった。それは自分に合ったフライを巻いているのだろうけど、自分流に凝り固まって間違った方向に行っていないとも言い切れない。
なかなか自分のフライを客観的に見ることはむつかしい。これくらい長くやっていると人に見てもらうっていうのもなんだか恥ずかしい気がするしなあ。
そういう意味でフライの初心に立ち返ってあらためて自分のタイイングを見直すきっかけに、このフックはなっていきそうだ。

本来良く釣れるフライというのはどういうものか? 形・サイズ・色・状態、様々な条件が釣り場での条件と絡み合い、実に幾通りもの答えがあるはずだ。
その答えに迷った時は、こんなフックで巻いたシンプルな一本が効くことがあるかも知れない。
さて、なにを巻きましょうかね。