其の百五十一  秋に巻く、春の毛鉤  
結局九月一日から来年の解禁のことも、いくらかはイメージしている。
来年の三月一日は日曜日だから、初物一匹を巡る攻防戦は熾烈な戦いになるに違いない(←おおげさ)
終わったばかりの夏の季節のフライはしばらくは巻く気分にはならないだろうから、やっぱり春先の毛鉤が頭に浮かぶ。
来年、三月一日、最初にどの毛鉤を結ぼうか?
来年使う毛鉤は全て新たに巻いたものを使うのは、無理かなあ。
良い思いをしたことのある毛鉤は
やっぱりまた巻くよなあ。
前回のT社の新しいフックを買った時、もうひとつM社Vブランドのフックも買っていた。
フローティングニンフ&ピューパとケースに書いてある。
個性の強い形状のフックだが、説明書き通りにフローティングニンフを巻いてみた。
アップアイで、パラシュートのポストをアイ側へ倒したら、ハックルがかなり巻きにくい。
まずは普通に巻いて、あとから整形することにした。慣れないフックで巻くのも結構てこずるが、なんとなくイケそうな気にもさせてくれる毛鉤になった。
アップアイはイトに結んで水面に浮かべると、
効果が出るような気がするが。
毎回禁漁の時に思うことなのだが、オフシーズンは本とか見たりして普段巻かないようなパターンも巻いてみたりする。繊細であったりある虫に特化していたり。あるいはそれこそフローティングニンフのように特定の状態のみを示すものや。
それらありとあらゆる状況を想定して準備した毛鉤を前にして、これなら大丈夫と自信を持って解禁を迎えられると思うのだ。
ところがいざ解禁になり、春の川を目の前にすると、それまでに準備した毛鉤は繊細すぎてなんとも心細い気がする。もう少し大振りのしっかりした毛鉤でないと使う本人も見えにくいし、ヤマメだって見つけられないのではないかと思ってしまう。
ただ、そこはやはりフライフィッシングなのだから、ポイントの状況に合わせて使いわけるのが常道だ。
来年の春の解禁になって、どんな川のどんなポイントにどんな毛鉤を放り込むのか。
解禁に一番遠い今だから、一番強い思いが欲する毛鉤を今は巻く。
それは春のまだ荒い川にはやっぱり頼りなげな毛鉤かもしれないけど、それでないと釣れないヤマメもきっといる。
そんな思いが交錯するのも春に遠い季節の過ごし方のひとつだな。
CDCとハックルで、シンプルカディスも。