其の百五十四  本で行く釣り旅(2)
釣り紀行ものの本は物語的要素もあり、読んでいるうちにその舞台の川へと気持ちが行ってしまったりする。
すると竿とかの道具ものの本だと、その道具の作られる工房へと気持ちが行くのだろうか。
バンブーロッドは、その素材からしてひとつの独特の世界を確立しているから、それ関係の本を読むと容易にその中に入って行ける気がする。
それはグラファイトロッドとかにはなかなか感じられない感覚だなあ、きっと。
バンブーロッドと聞くと、やっぱりちょっと読んでみたくなりますなあ。
バンブーロッドの話は、すなわちビルダーの話でもある。
そのロッドと作り手の話は別々ではあり得ないから余計に引き込まれる内容になるのだろう。
僕の住む街にはM川氏の工房がある。ビルダーがすぐ近くにいるから、この手の本に書かれていることが実に自然に読み進めることができる。
工房の様子など、書かれているビルダーの工房とM川氏のそれとを無意識に重ね合わせてイメージしている。
本の写真はイメージ作りのファクターになる。
バンブーロッドを使う釣りが好きだけど、じゃあ自分で作るとかはしないのか?
そうだなあ、僕には無理というか作るよりも使うほうが性に合っているかなあ。お金と場所と時間がいるし、まずは本業の釣りだなあ、やっぱり。
自分で作ることが出来ないから、バンブーロッドの本に魅かれるのかも知れない。物を作り出す工房とかの雰囲気は決して嫌いではないしなあ。
その雰囲気がM川氏の工房になり、本の中に綴られる工房へと続く。
そして本に書かれるビルダーの人柄が、その人の作るロッドの出来栄えに重なって行く。
ロッドの持つ機能や雰囲気は、やはり作り手の色が濃く出ているのだと思った。
以前に買ったバンブーロッドの本は、この前読み終わった。
もう何回読んだだろうか。二度目三度目でも飽きずに読むことが出来る。
読むたびに工房やビルダーを目の前にしたような臨場感が色あせずに感じられるからだ。
きっとまた時が経ったら読み返すだろう。その時も初めて読むような新鮮さがあるに違いない。
本で行くロッドビルダーの工房を巡る旅は、そう簡単には終わらない。
繰り返し読むことで本が更に育つような気もする。