其の百五十七  放流 Small Talk
曇った空は蓋の役目をしてくれるので、地表の温度がかろうじて残っている。
この日の朝の気温はどれくらいだったのか。つらいほどには冷え込んではいなかった。
集合場所にはすでに漁協の軽トラがスタンバイしていて、何だか今年の放流はスムーズだなあ。
Yの車に総勢六人乗っての放流会参加だった。ほかのメンバーも集まり、いつものように漁協軽トラのタンクをのぞいてみる。
今年は全うな放流のための稚魚が用意されているようだった。
朝もやの中に怪しげな集団。放流の面々です(^_^;
毎年のことだが、稚魚を川に放つことにはそれなりに感慨深いものがある。
放流した稚魚たちは最初は川べりの流れのゆるいところにかたまっていて、なかなか泳ぎ出さない。
それが少し川の様子に馴染んでくると一匹二匹と流れの中へ泳ぎ出していく。
水の住人たちがコンクリートの生けすじゃなくて自然の地面の上を流れる川での生活を始める。
それは釣りへとつながる目的ではあるけれど、それだけじゃない気がするなあ。
放たれた稚魚たち。これからどうなるんだろう(; ゚×゚;)
放流を介して久しぶりに川を訪れると、ロッドを振らない季節の川を新鮮な気持ちで見ることになる。
紅葉の山、青さを失った土手、ちょっと少ない水量。見覚えのある川原でもちょっと違う雰囲気だなと思いながら稚魚を放す。
稚魚にしても山や川にしても、これからひと冬を越してより大きく成長し、新たな芽吹きや川の流れが生まれる。
その直前の儀式のようなイベントになってきたなあと、ここ何年かの放流会に参加して、そんなふうにも考えた。

そしてまたまた放流のあとのランチが待っている。これもすでに何年続いているかなあ。僕自身、放流会自体は参加し始めてからは一度も欠くことなく来ているはずだ。
朝の放射冷却を曇り空で回避でき、次第に晴れて暖かくなってもきたから、一番いいパターンの天気に恵まれた。
もうすっかり腹も減ったなあ。
スカッと晴れてきた。放流のあとは恒例の・・。
放流の内容を報告します。みなさん、来年はどこそこが良いですよ、と。 圧巻の山盛りの豚の角煮。
カレーもあるでよ〜σ(^_^;)
いつものキャンプ場に集合し、イスとテーブルをセットしたらあとは食べるだけ。
みんなまだかまだかと炊事棟をのぞき込んでいる。
待っている間にキャスティングを始めるメンバーもいた。
すると釣り具屋の番犬(?)が脱兎のごとく走り出した。いやあ良く走る。さすが牧羊犬。僕はもう死ぬまであんな全力疾走をすることはないだろうなあ。
海釣りやら某氏の結婚の話やらで盛り上がっているうちにどうやら昼食の用意ができたようだ。
キャスティングの様子は彼の狩猟本能に火をつけたようです。
食べるだけ食べたらすっかり落ち着いてしまう。
去年は天気が悪かったから早めの撤収となったが、今年はのんびりできる。
落ち葉が敷き詰められたキャンプ場の上は、街のアスファルトやコンクリートの上と違ってしっとりとしていて安心する。
きっと養魚場から自然の川に放たれたヤマメたちもちゃんと餌を取れて空腹が満たせたら、こんなふうに落ち着けるに違いない。
お、次も恒例のビンゴゲーム大会だ。これは燃える〜\(;゚∇゚)/
僕たちもいつかこのキャンプ場の腐葉土のようになっていくのかなあ(-_^;)