其の百五十九  蕎麦とカワムツ
バタバタと忙しい日が続いていたが、ぽっかりと週末に予定が空いた。
さてなにをしようかと考えたが、何を思ったか、(カワムツを釣りに行こう)と急にそんな気になった。
家から三十分くらいのところまで車で行って、目に付いた川をのぞいてみた。
ススッと魚影が走る。やっぱりカワムツはどこにでもいるな。探す手間はいらないみたいだ。
竿の降りやすそうな川原に降りてニンフを結んだ。釣れるか?
感じのいい川ではある。狙いはカワムツでも(^_^;
一投目でマーカーは引っ張り込まれて極小カワムツが一匹釣れた。
ニンフは#12だから明らかに大食いだな、こやつ。
しかしカワムツは魚体がきれいだし、触ったあと手がくさくならない。悪い魚じゃないな。
それから何回か投げてみるが、フライをつっついてはくるが、マーカーを引き込むほどではない。
試しに合わせても掛からない。
なんだかすでに飽きてきた。さすがにこういう釣りは緊張感がないなあ。
すぐ釣れました。強力に小さいな。
カワムツも狙って釣ろうとするとなかなか釣れない気がしていたがその後も場所を変えてニンフを流すとすぐに釣れた。
大きさは様々だが、同じ#12のニンフに食いついてくる。
ヤマメもニンフに食いつけばこれくらい明確にマーカーを引き込むのだろうか? ここまではっきりしたアタリはシーズン中にはあまり見たことないなあ。
対ヤマメでニンフに今一つ自信が持てないのは、ニンフでの良い釣りをあまり経験できていないからだろうか。
どこものどかな川ばっかり。
ギラギラした釣りは似合わないなあ。
マーカーが引き込まれる瞬間は相手がカワムツでもドキッとするものだ。
その瞬間だけは微量のアドレナリンが分泌されてもおかしくない。そのあとはやっぱりカワムツかとわかっていてもがっかりする。
せめてモロコやクチボソとかが釣れたらまたテンションが違ってきただろうけど。
でも忘れかけていた釣りの感触を少しは味わえてまずまずかな。
山は陽が陰るのが早い。時間はまだ早いがだんだん薄暗くなってきた。
ちょっと大きい。やっぱりカワムツでもサイズがいいとうれしいもんです。
竿をたたみ車でもときた道を戻った。行く時にちらっと見えていて気になっていたそばの旗。
う〜む、こんな場所で蕎麦屋があるとは知らないし、やってるのかなあ。旗はでているけど。
半信半疑で旗の所から小さな道に折れ、看板に沿って行くと確かに蕎麦屋があった。
甘露子(ちょろぎ)というその店は去年オープンしたらしい。どうやら店主の方は有名な蕎麦打ち名人T氏のもとで修業をされたようで、そのことが店のパンフレットに書かれていた。
いきなり出現した蕎麦屋。
知っててでないと来る人は少なそう。
もりそばを注文。
客は僕と入れ違いに一組帰ったからほかにはいない。
古民家を改装した店は静かで落ち着く(ほかに客がいないからか)
そばはたいへん美味しく、過去のあちこち食べ歩いたどのそばよりも僕の好みだった。
こんな山の中でオイカワ釣りの最後にそばが食べれるとは思わず、更には帰り際には店主の方に大変丁寧に感謝のお辞儀をされて、逆に恐縮してしまった。
また来ますよ、と心の中でつぶやいて、甘露子を辞した。
週末最後のシメ。終わりよければ・・・ですな<(^^)