其の百六十一  年の瀬に釣り竿を愛でる
恒例のM川ロッドの試投会は、今年は年末の押し迫った時期に行われた。
試投会は一度の欠席もなく顔を出しているはずだが、僕の知る限り雨に降られたのは初めてのことだった。
12月の雨は冷たい。まだ昼を回ったばかりの時間でも薄暗く冷え冷えとしている。
そんな訳で会場は釣り具屋の店内になった。僕はそのうち雨はあがるだろうと思って午後から出掛けたのだが、その思惑は外れて雨は止まず、店内にはM川氏が座っていた。
今年は雨なので、釣り具屋の店内での展示です。
釣り仲間のYもすでに来ていた。ちょっと前に彼からアジの開きをもらっていたのでお礼を言うと、携帯の画面を見せてきた。
「でかいアジじゃろー」
ウソつけ、なんじゃこりゃあ。ハマチ? いっしょに写っているロッドであげたのか?
なんというやつ(◎_◎)
M川氏は雨の止み間をみつけてお客さんと道路向こうの土手に向かった。
店内のテーブルにずらりと並べられたM川ロッドを僕はしげしげと眺めた。
うずうずしていますな。
店内じゃ遊んであげられません。
Yとロッドを取っ換え引っ換え持って感触を確かめてみる。
Yも僕も同じ7フィート#4を所有している。テーブルにも7フィート#4がずらりと並んでいるが、
「お、これ色がいいね」 「何? これアクションが違う」 「バットが細い〜」
M川ロッドの7フィート#4を毎シーズンかなり出撃させている。もうすっかり手に馴染んでいるし、なんの不満もない。ところが同じ7フィート#4でもこれだけ見た目やアクションの違うモデルを目の前にすると、(い、いつの間にこんなにバリエーションが〜)と思ってしまう。
まあ僕が知らなかっただけだろうけど。でもこうやって別のロッドを手に取ると、やっぱりまた新鮮な感触の刺激があるなあ。
その中でも特に気になったのはノードレスのロッドだった。
ブランクのフィニッシュではわからないように仕上げてあったが、これはいいなあ。
同じ長さ、同じ番手でもやはり大きく違って感じる。そしてそれぞれのロッドを使い分けることもまた釣りの楽しみのひとつだ。
どの道具でヤマメを釣るか。同じ魚を釣るのでも道具が違うとまた変わってくる。
そして釣りに行くその日、たずさえる道具でわくわくする感覚も違ってくるよなあ。
ロッドには表情がある。
みなそれぞれにいい顔をしています。
もう年末。すぐに一月二月と過ぎていき、解禁がやってくる。
もちろん今持っている704やほかのロッドで次なるシーズンを迎えるのだが、新しいロッドで臨戦態勢に入るのも、グッと緊張感と期待感が高まりそうだ。
今は全体的な状況からそう簡単にはいかないが、いずれまた新たな刺激を伴った風を吹かしてみたくもある。
M川氏がロッドを片づけ始めた。釣り仲間のT君は新たな風を発注したらしい。
そりゃあ良い新年が迎えられるなあ。
ロッドには道具として以上にいろんなことが託される。