其の百七十八  釣り具と筆記具(2)
ペリカンが限定の万年筆を出した。値段が手ごろだったので買ってみた。
しかし万年筆の世界はとかく限定品が多い。今回のものは安かったが、逆にそれこそバンブーロッド並みかそれ以上の値段のものもごろごろある。
今回の限定はブルーのスケルトンで、(これは釣りに持って行く用だな)と見た目が水のイメージというような単純な理由で買ったのだ。
ところがこの限定を買って、いろいろと気が付いたことがあった。
ペリカンのデモンストレーターブルー。
遠慮なく使えそうです。
このブルーは前回買ったスーベレーンの14金のペン先と違ってステンレスのペン先だ。だから安い。
で、ブルーで書いてみると明らかに書き味が違う。固い、と言えばいいのかなあ。
前回万年筆を買った時は、ペン先のサイズや柔らかさに着目していたが、ペン先の素材でもずいぶんと差が出てくる。ステンレスは書き味が固いと言うか手に持ったペンからダイレクトにノートに書いている、という印象が強い。
それに比べて14金は自分はペンに軽く手を添えているだけ、という感じだ。あまり意識して書こうとしなくてもいいようなそういう感触がある。
それだけ14金は紙との摩擦が軽減される素材ということなのだろうか。
そしてさらに書き味を左右する要素で気が付いた事に、万年筆本体の自重がある。
今回のブルーは前回のスーベレーンよりひと回り小さいモデルだ。素材も両方とも樹脂は樹脂でも違うと思われる。
そうなると当然重さが違ってくる。ネットで見てみると14gと17gだということだ。
ペン先の素材に加えてこの自重の差が書き味の差になっているのは間違いない。
ペンの自重が重いとそれだけ書く時に力を入れなくても筆記に必要な筆圧は確保できるのだろう。
それぞれに役割を与えて使い分ける楽しみもあります。
道具の自重が人がする仕事を一部受け持つ。これもフライロッド、特にバンブーロッドに言えることだなあ。
当然道具を操るのは人の手だ。しかし1から10まで全てを人の手でやる訳ではない。どちらかと言うと手は軽く添えているだけ。あとを道具が勝手にやってくれるというそんな感じだ。
ロッドを振ってラインに方向性を与える。あとはロッドがラインを運んでくれる。
ペンを軽く持ち文字を書く。ノートにペン先を当ててインクを出すのはペンの自重で。
今回買ったブルーの限定は、どちらかと言うとグラファイトロッドに近い。バンブーロッドは前回のスーベレーン、もしくはもっと大型の万年筆がより道具がする仕事を体感できるな、きっと。
川の状況でロッドを使い分け、ものを書く状況でペンも使い分ける。その状況に応じて様々な種類のロッドやペンがある。その構造にはこんなにも共通点がある。
でもそういう道具の秘められた機能に気付かないで使っていることもたくさんありそうだ。