其の四十八  TMC 2312 雑感
新しくフライフックを入手した。
と言っても別に新発売と言う訳ではなく、以前からティムコ社でラインナップされている製品だ。
TMC 2312 はホッパーやテレストリアル用で、ゆるやかにカーブした長いシャンクとストレートアイを持つフックだ。
せんだって購入した佐藤成史さんのDVDを見ていて、ミドリカワゲラのイミテーション、「イエローサリー」がこのフックで巻かれているのを見て、買ってみようと思い立ったのだ。
積み上げられたフックケース。
「ソコにあるフックで巻く」病発症である。
私は佐藤氏のファンなので、氏の著書やビデオなどは結構持っているが、その中で1990年に発行された「ザ・フライズ Part 1」の巻末で「TMC 2312 は個人的に非常に好きなフック」と書かれている。
それならば手に入れねばなるまいと当時私が買ったのは、ショップにたまたまあったTMC 2302 だった。2312と同じフックだが、ダウンアイという点のみ違っていた。なんとしても2312を、とまでは思わず同じくショップにあったTMC 200R が2312に似ていたし、こっちの方がかっこいいと思ってそちらを使っていた。
ゆるやかに弧を描くシャンクは創作意欲をかき立てる。
200R はサーモンフライ用のローウォーターフックのようにバーブの根元の手前がしゃくっている。デザイン的にもそれがカッコ良さを演出している様な感じだが、渓流のドライフライにはなんだかちょっと雰囲気がヘヴィーすぎるような気がする。それに若干ゲープが狭い感じがして、そんなこんなでここ数年は 200R も、ついで(?)に 2302 もあまり使わなくなってきていた。
で、先述のDVDである。
すぐに触発されて「ザ・フライズ Part 1」を引っ張り出して読み返すと「シャンクのカーブの程度と長さ、そしてワイヤーの太さのバランスが非常によい」とある。数日後、入手したパッケージから 2312 を出してしげしげとながめて見ると、う〜む確かに シャンクとワイヤーの太さのカーブがいい・・(ん?)。
TMC 100 などは非常にオーソドックスな釣り針っていうカタチをしている。
同じストーンフライパターンを巻いてもフックの形状でかなり印象の違うフライになる。もちろん魚の目から見た場合のそれは、あまり大差はないのかも知れない。
しかし最初にフライを目にする釣り手が、自信を持ってプレゼンテーション出来なければ釣れる魚も釣れないってモンでしょう。まずは巻き上がったフライを見て「こりゃ釣れるで」とにやにや(キモチ悪い?)するくらいでないと、歴戦のアマゴに太刀打ちできないのではないか? と考えるのだ。
TMC 100 と 2312 とでイエローサリーを巻き比べ。どっちが虫っぽい?
最近はバーブレスはもちろん、SPポイントのフックがその強度と貫通力と抜けにくさを全面に押し出し、愛好家も増えている。
その代表格はやはりTMC 100 で、機能でチョイスするならそれとなり、ディテールで選ぶなら選択肢はそれ以外に一気に広がる。

ただ、そんな中にも個人の好みというのは確かに存在する訳で、お気に入りのフックで満足のいく一本を巻けて、満足のいく1匹を釣り上げる事が出来るのなら、全く持ってなんの問題もない。
フローティングニンフですら、2312のかもし出す虫っぽさは言わずもがな。