其の四十九  そこここにある真鍮たち
タイイングツールは何千本、いや何百本、いや何十本・・(?)ものフライを巻くためにその堅牢性が重要だ。
しげしげと眺めて見ると、ツールのほとんどが金属製なのもやはり堅牢性を優先させてのことだとわかる。毛鉤にイノチを吹き込む正しき道具達は金属製なのだ。
オーソドックスなものから各メーカーが心力を注いだ新製品まで、手にする重厚感はなかなかほかでは味わえないものがある。
ソコのあなた、川ばっかり行かないでタイイングを趣味にしたらいいじゃんね。
いや、マジで(!?)
イチバン手にする回数の多いBrass。
そんな数あるタイイングツールだけど、その素材あるいは部分的に真鍮が多く使われていることは、色を見てなんとなくそうだなーって認識していた。
金より若干鈍いめの色をしたこの金属はツールの至る所に使われている。スタッカーやハーフヒッチャーはこれが多く、ほかにウィングバーナーやらダビングツィーザーとか(これらは最近影が薄い?)も真鍮のものが多い。
なぜ「真鍮」なのだろう?
スタッカーは自重のあるものが使いやすい。
銅と亜鉛との合金で加工しやすくさびないこの素材は(なんだ? いかにも辞書で調べたっぽいこのコメントは!?)、加工の容易さや対腐食性が選ばれた理由には違いない。
手に持ちっぱなしで汗で腐食しやすいことや、ありとあらゆる毛鉤を具現化するための自在なカタチにする必要を考えるとうってつけの素材だ。
適度な重量も良さ気だし、色の雰囲気も良い。アルミとかと一緒に使われていると、シルバーとゴールドのコントラストもいいし、高級感も漂ってくる。
最近はアルミのツールが多く出ていて、新発売の真鍮製のツールはあまり見かけない。
見た感じの雰囲気もアルミのものはその洗練されたデザインもあいまって、最新技術を駆使したっぽい感じがする。
そうなると真鍮はいかにもなクラシカルワールドどっぷり感が強い。
ま、ちゃんと機能しているのだからそれはなんの問題もない。それどころか真鍮ツールにはアルミツールの先端機能や軽さがない代わりに、歴史の重み(大げさ!)というか厚みのようなものがある。
勿論アルミだって何十年も使えるのだが、真鍮のツールは長年使い続けてこそ、その価値が更ににじみ出てくるような気がする。
部分的なパーツでなく全体が真鍮だと重厚感はかなりのものだ。
更に、真鍮は変化する。
というか「汚れる」のだ。酸化か手垢かわからないけど、使い続けるにつれその色は徐々に黒ずんでくる。それはフライロッドのコルクが汚れてくるのと同じ感じだ。
でもグリップが黒ずんできたからって、洗う人はいないだろう。古い真鍮ツールも磨けばぴかぴかになりそうだが、あの鈍い金色の使い込んだ感が味わいになる。
長年使い続けて、いくつもの毛鉤を巻いて、色もくすんできてようやく、手に馴染む道具になってくる。
私のなんて、まだまだだ。
フィニッシャーの名に恥じないタイイング最後の道具もまた・・。