其の五十三 水辺の近況 「秋深まりて、渓巡り」 | ||||||||||||||||||||||||||||||
紅葉が見頃です、とニュースで言っている。そんなことはテレビ局のアナウンサーに言われるまでもない。 先週は仕事の都合で市内からの脱出は叶わなかったが、今週はバッチリだ。カメラにフィルムを装填し、デジカメはフル充電、ガソリンも満タンで降水確率は0%。あえて言うならばハラだけが減っている。 高速はさすがに車が多く、インターチェンジを降りてもいつもよりは賑わいを見せる山間部の、それでも更に北へ向かい標高を上げて行くとだんだんいつものひっそりとした静けさが戻ってくるはずだった。 しかし、行楽を目的とした車のほとんどはメジャー級のS段峡の紅葉が目当てで、インターチェンジを出ても脱落する車はおらず、よそ見しいしいののろのろ運転が続き、その後ろの我慢の運転を余儀なくされる事になる。 |
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紅葉の葉は落ち、残っているのは常緑樹のみ(!?) | ||||||||||||||||||||||||||||||
優越感はこのあたりから顕著になってきた。 ちょっとアンタ方、なにも好きこのんでわざわざ週末に山へ出掛けて来てるのに、これまた人でごった返す遊歩道を歩くこたぁないでしょうに。 へへっ、こちとらガイドブックになんか載ってない極上の紅葉をばっちりファインダーに収めちゃうんだからって・・・、あれ? 散っとるがな。 それでも道路と岸辺にびっしり敷き詰められた落ち葉はほかのだれでもなく私の独り占め状態だ(いや、それは別に・・いいかな・・・)。 |
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水辺にかたまる落ち葉。そして、その下には・・・。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
こっちはなかなかのサイズ。この時期でもしきりにライズしていた。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
チビアマゴ発見! 禁漁期間に見ると妙にテンションが上がります。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
当てが外れたので、そのままほかの車の流れに従い北へ向かう。 あちこちで車が停まっていて、みんな山に分け入ったり写真を撮ったりしている。しかしどうもいまひとつで、どうやら今年の紅葉は台風の影響がかなり出ているようだ。 ふと友人のメールでの情報で、「アマゴの姿が見れた」川を覗いてみる事にした。もうこのあたりはしっかり釣りシーズンでは通い慣れたエリアだった。 川沿いを歩いてみると、何か水面が動いた。ライズだ! おお、ライズしとるではないか!! この時期はもう産卵は終えている?(あまり良く知らないんだけど) いずれにしてももそっと水面に顔を出して何かをついばんでいる。ええ感じののライズだ。 |
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はなっから釣るのが目的ではない時のライズとの対面はなんだか不思議な感じがする。 釣るぞっていう闘争心みたいなのは沸いてこず、なんとも穏やかな心情でライズで起こる水紋を眺めていられる。きっとシーズン中だといくらチャンスそのものは多くても、こんなにもじっくりとライズを眺めるなんてことないのではなかろうか。 「ライズの決定的瞬間を」ってついムキになってシャッターを切ってしまった。腰は痛くなるし、無意識に息を止めるから酸欠になりそうになるし、危うくふらついて川に落ちそうになった。 |
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一枚のモミジ、川底の石と水面の波とが作る幾何学模様に浮かぶ。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
釣りシーズンは釣り竿とカメラと両方持って行かなければならず、ほかにもベストにこまごまとモノが入っていて、背中にはおにぎりとペットボトルも入っている。 それに比べたらオフは楽なもんだ。荷物はメインのカメラとレンズだけ。出来ればウェーダーも持ってきて、必要な時はウェーディングすれば完璧なんだけど。 あれ? でも確か今日は紅葉の写真を撮りに来たんだった。 ダメだね。一度ライズを見ちゃったら、紅葉なんて目に入んねーし。 ライズの渓をあとにしての道すがら、地元の野菜や柏餅とかお弁当を売っているこじんまりとした店でおにぎり弁当を買った。その中の蕗のおにぎりはもう、絶品だった。 空腹も充填できて、よは満足じゃ!!(?) |
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北側の斜面は台風の影響が少ないようだった。 | ||||||||||||||||||||||||||||||