其の五十八  早春の黒カディス
春先に釣りに出掛けると小さな黒いカディスをよく見かける。
川辺の石にかたまって取りついていて、ちょこまかとせわしなく動いている。
「これだけの数が水辺にいるのなら、きっとヤマメが食っている」って思うのもこれまた自然な話だが、じゃあこのカディスに似せたフライをボックスから探し出そうとすると・・・、ない。
よく見かける割に、このカディスを意識したフライは巻いた事がなかった。
T社の新製品で巻いた黒カディス。
まず第一にサイズが小さい。
#16とか#18くらいがこのカディスの大半のサイズだ。事実そのサイズが川に居るのならサイズをマッチさせれば有効なフライと言えるが、まだ解禁間も無い頃から、体も釣りの感覚を思い出しきっていないのに、そんな小さなフライを使う気がしない。
ドライフライは使うのだが、やはりもう少しサイズを上げないと見えないし、見えていないとなにかと不安なのだ。

見えていないと言えば、色もそうだ。今まで私のフライフィッシングでの「黒」は夏の色だった。
春先のカディスとは違う種類だが、こんな感じのヤツがうろちょろしている。
なんとなくだけど、春まだ浅い季節は淡い色のフライを。それが季節がだんだん進むにつれ、使うフライの色も濃く変化して行くっていうイメージが今でもある。
当然そういったフライを巻くのに対応するため、スレッドからダビング材・ハックルなども色の変化を意識してそろえた。今でこそずぼらタイヤーになってしまっているが、フライを始めたばかりの頃は狂ったようにタイイングしていて、それこそ早春のパターンばかりのフライボックスや初夏用・テレストリアル用と、フライボックスも季節で使い分けていた。
でもその中にさえ、黒いカディスはなかった。
たまたま発売になったT社のカディスウィングがなぜか黒だった(ほかの色もあるが)。
普通にカディスをイメージするなら、エルクヘアのような茶系の色になりそうなものだが、この製品の黒は春先のあのカディスをタイイングせよ、と言うことなのか(?)
で、私のフライボックスに初の黒いカディスが入ることとなった。
先入観にとらわれず、春から黒いフライを使ってみることにしよう。小さくて黒くて見えないが、そこはかまわずド派手なインジケーターでも付けてしまえば問題ない。
(いや、なんかインジケーターに魚が出そうな気がするなー・・。)
今日も夜な夜なウィングを成型する。
なんかこわいかも(!?)