其の六十一  回転運動がもたらすモノ
毛鉤を巻く机の上はとかく回転モノでひしめいている。
毛鉤を「巻く」のだから、回す動作は必然と多くなる。そして回わして使う道具はタイイングツールの中でかなりの割合を占める。
更にそれらは例外なく使っていて心地よいものばかりだ。

あらためて思うに、ヒトがモノを作り出す時、それはタイイングに限らずかなり・・・回してます。
回すといっぱいモノが生まれます。きっと回すってすごいことなんだ(?)
ロータリー機構をもつバイスは必要がなくても回したくなる(?)
回転作業のメインはやっぱりボビンホルダーを回すこと。 クランプタイプのジョーよりもネジを回すヤツが好きなのです。
なにかを支点に円を描く動作は、例えば陶芸でロクロを回すとか、例えば蕎麦をこね鉢でこねたり麺棒で延ばしたりとか、例えばビザ生地を回して薄く大きくしていくとか、例えば納豆をかき混ぜる時とか(だんだんハラ減ってきた)、なにかしらを作る時、円運動が絡んでくる。
そういえば当たり前のことで特別意識した事もなかったが、カメラのレンズのヘリコイドリングや絞りリングも「回して」ますな。
回転運動はひょっとしてなにかを作り出すことの出発点に位置するのかも知れない。
タイイングにおいてはスレッドでの下巻きに始まり、各種マテリアルを巻き止めたり、ダビング材を撚りつけたり、ハックルを巻いたりと、回転作業の連続だ。
回転の中心とタイイングツールを外へ押しやる遠心力とをつなぐスレッドやマテリアルのテンションが、巻いてるっていう実感を手に残す。

タイイングするのは毛ばりが必要だからと言うのもあるが、この回転運動のもたらす心地よさが無意識にバイスに向かわせるような気もする(のわりにあまり巻きません?)
ハックリングは鳥の羽を「巻く」その代表格。
それでも巻いて巻いて、そして出来上がった毛ばりは、回転運動の慣性をその細いシャンクに封じ込めている。その内なる慣性エネルギーがここぞと言う時、それはライズに対峙した時とかに、爆発するのだ(スレッドが解けてハックルがほどける・・という意味ではない。)
きっとシャンクに封じ込めるのは、慣性やマテリアルだけでなく、巻き手の思い入れが一番大きいようだ。

さて、今宵もまたひと巻きするとしましょうか。
もちろん最後は回してフィニッシュ。