其の六十六  フライボックス遍歴
フライフィッシングならではの道具と言えば、ロッドにリールにリーダーにフロータントに・・全部か。
ロッドとリールはまあ、カタチは多少違えどほかの釣りでもある。ラインやリーダーもそうだが、かなり機能というか構造は違う。ほかのこまごまとしたアクセサリー類はどの釣りも共通のものが多い。
この釣りだけのものには、まずフロータントがある。ポケットから怪しげな小瓶を取り出し、手元でごそごそする。ホント怪しい。ま、こういうのもこの釣りの面白さだろう。あとはフライボックスか。
オーソドックスにして自由度が高い。
ベストに必ず入っているボックス。
機関銃で言えば「弾倉」にあたる、この箱。実に様々なものを使ってきた。
多かったのはやはり透明プラスティックでいくつかのコンパートメントに別れているヤツ。フライを始めた当初はそういうタイプばかり持っていた。巻くフライにしても、エルクヘアカディスやスタンダードパターンが多く、巻いたはしから放り込めるこのフライボックスが当たり前だった。
その後、ウエットフライに凝ってクリップタイプのものを買ったり、樹脂の肉厚の薄い軽量なものを使ったりしていた。
何年かが経ち、釣り具屋で手に取ったフライボックスでちょっと変化が起こる事になった。
初めてフォームのフライボックスを買った。ホイットレーのものだった。波形のフォームはハックルなどにクセのつかないようにするための形であるが、そうはいっても収めるフライの種類に制限が出てきた。
ハックルのクセを気にする前に、このフライボックスに似合うフライは? と考えてしまったのだ。
一本一本フォームに並べて差し込んで行く。ずらりと並んださまはやっぱりCDCパターンがキマル。そんなフライボックスをプールのライズを前にして取り出し開く・・。いいねぇ。
やっぱりCDCパターンがフォームのボックスには似合う。
ライズがあればもちろんそれに向き合うし、シルエットやサイズを意識してフライを結び替えたりもするのだが、出番はと言えばそう多くはない。やはり耐久性のあるパラシュートやカディスを結んで釣り上がるスタイルがほとんどだ。
すると取り出すフライボックスもおのずとよく使うフライの入っているものになってくる。フォームにきれいにフライを並べているホイットレーは、「もしも」の時の保険のようなボックスになっていった。

まさか、使いたいフライボックスを起点に釣りのスタイルを決めるなんてことはなく、自分の釣り方が使うフライやその入れ物に現れてくるって言うのが本当のところだろう。しかし予期せぬ場面に対応するためにはいろんな種類のフライ(ボックス)を持って行かざるをえない。
この春またフライボックスを手に入れた。これもフォームにフライを差し込むタイプのもので、結構気に入っている。
先述したホイットレー同様CDCパターンを並べたくなるが、ここ数年の課題でもある「フライベストの軽量化」を考えると、同じような中身のボックスは二つは要らない。この新しいボックスにはほかのどうしても外せないボックスにはない仕事をしてもらうように工夫が必要だ。
あとは川で頻繁に取り出すためにはどんなフライを入れるか、だな。ひょっとしたらそのフライが私の釣りを変えることになる(ならない?)。
獲物を狙う弾(タマ)、即戦力パターン専用ボックスとしますか。