其の六十九  Sザキウィング、翔ぶ
T社が今年発売していたSザキデザインのウィングマテリアルを、遅まきながら購入した。
そもそも雨が降らないのがいけないのである。渇水で釣りに期待が持てないから、週末ふらっと釣具屋に寄ってしまい、いらんモノを買ってしまう。
(あー、なんかまた、袋から出さずじまいになりそう)なんて思いながらちょっとの間ほっといた。でもそれじゃあんまりだから、重い腰を上げてバイスに向かった。
結論を言うと、これはイイ。季節がらテレストリアルテイストになってしまうが、それだけ見ても十分イケテます。
ダークグレイのカディスウィングを装着。見た目はテレストリアルそのもの。
出来映えの翅の模様のリアルさもだし、軽さ、フロータントとの相性、それによる浮力と、ドライフライマテリアルとしてはかなり秀逸だ。
更にはこれもSザキ氏にやられたなーってカンジだが、タイイング工程の楽しみも十分に盛り込まれている。
デザインカッターで切り取ったり、別売りのマーカーペンで着色したりと、「創る」感をきちっとお膳立てしてくれている。
私はめっぽう遠慮がないので、折角のご好意にはしっかり甘える事にした(お金は払うけどね)。
ところでこのペン、そのうち溶剤が揮発してスカスカになったりせんだろうか?
ウィング用マテリアルはいろいろと買ってきたが、とどのつまりこういった凝ったマテリアルはずっと使うまでには至らなかった。
結局はオーソドックスなウィングマテリアルに落ち着いてしまうのだし、それで釣れるのだから問題はないのだが、それだとちょっとオモシロクナイ。前回アップした釣り場での昼ご飯の話でも書いたが、ちょっとひと手間加えることで価値が高まる気がする。
一旦魚が手に出来たら、釣れた時の毛鉤にはもう用はないのかといえば、当然次に使うし今後のタイイングの参考にもする。なにより良い釣りが出来た毛鉤はずっと取っておきたいと考えるのが自然だし、また次の釣りにも登場していただかなければならない。
その意味で巻いた後の満足度の高いフライは、加えたひと手間分期待が大きくなる。
現場で手の延びやすいオーソドックスなパターンは、言い換えれば無難ということでもある。
凝ったウィングマテリアルを使ったフライが、オーソドックスバターンと比べて不利な状況と有利な状況を想像すると、フィフティフィフティってとこだろうか。
しかし不利とは言っても全くダメということでもなく、不利は不利なりに効果はあるようにも思うし。
ストーンフライ用のウィングを応用してビートルをイメージ。
夏の主役のテレストリアルフライのマテリアルは、割とナンでもアリ的なところがある。
フォーム材にしても、キラキラの玉虫カラーシートにしても、色使いにしても。およそ解禁当初の繊細なメイフライパターンにはあり得ないモノばかりだ。
そんなシンセティックマテリアルの中で、このSザキウィングはかなり自然素材に近い風合いを醸し出している。両方の良さを合わせ持っていると言った方が近いか。
常用とまではいかなくても、サカナにも自分にとっても目先を変える一本になりそうだ。
発売元のメーカーのホームページで出ていた作例をもとに。黒いウサギか?