其の九十四  テレストリアル、幾多
梅雨明けも秒読みです。
本気で黒いスレッドを使う季節がやってきたようです。
春のメイフライパターンとは明らかに違う形態のフライを巻いています。もっと早くからでも効果はあるのでしょうが、春からのパターンでも問題なく釣れるので、あえて陸生昆虫を意識したフライは使っていなかったのです。

早速ピーコックを取り出しますが、いいところは使ってしまっていました。そのうち買いに行かなくてはなりません。
ビートルと言えば、やっぱこれでしょう。
仕方ないのでピーコックのアイから離れた部分で、とりあえずパラビートルを巻きます。
ワイドゲープのショートシャンクフックで下巻きを太めにして、ずんぐりむっくりに仕上げます。ビートルっぽさが出てきました。

ストックのあるマテリアルはフォーム材でした。僕はこれでアントを巻きます。
薄いシート状のフォーム材を短冊状に切り、それをアリのボディに見立てて巻きつけていきます。
結構ウマイ具合にアリのあの独特のボディの膨らみを表現出来るのです。
シルエットと浮力重視のパターンです。
細身で軽く巻く春先のパターンに対して、テレストリアルはどちらかというと好きなように巻ける印象があります。
太かろうが、いびつであろうが、派手な色使いもお構いなし。でもそれでは面白くありません。ここはやはりフライフィッシングなのですから、キビシイ季節のフライも手抜きなしで行きたいものです。
僕の場合、やはりパラシュートパターンが多くなります。あとはエルクヘアのウィングで、ボディを黒っぽくするっていう感じでしょうか。
夏は積極的に沈めたいなぁって思わないでもないですが、出来ることならドライフライで釣りたいという気持ちも捨て切れません。
ワーム系フライはあまり多用しませんが、明らかにほかとは違う色を持ってこれるのが強みです。
虫の種類によっては毒々しい色のものもありますが、僕が巻くのはせいぜい蛍光グリーンのものくらいでしょうか。
特にこの色が爆発的に当たったという経験はないのですが、ひょっとしたらこれからあるかもしれません。
そう思わせる色です。

もちろんこいつの元が薮漕ぎで服にでもつこうものなら、谷間に悲鳴がとどろきますが・・・。
シェニール系のボディはとにかく巻くのが簡単です。
夏の渓流でド派手な色をまとった虫が飛んでいるのをよく見かけます。
黄色や赤のとにかく目立つ色です。
それはインジケーターのようでもあり、パラシュートのポストも視認性の目的だけではない、ああいう部分を持っている虫もいるのだなあ、と思います。
特に黄色と黒のコンビネーションもハチだけには限らず、夏の渓流では有効な組み合わせのようです。

これから軒並み30度を越える日々が続きます。渓流とて劇的に気温が低い訳ではなく、木陰で涼風の吹く別天地のような場所はほんの一部です。
そんな暑い場所でそれでも一匹手にしようと日々こんな怪しげな毛針を巻いているのです。
こいつはまだ使っていませんが、釣れるのかしら?