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第十話 ”台風と赤星” |
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8月31日です。
今年もあっちゅう間にこの日が来てしまった。運良く土曜日だったのも背中を押したのだがとにかく行ってみるべっていうことで、けたたましく目覚ましは鳴る。 |
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台風15号の予想進路は広島の西側、影響を強く受ける時間帯はその日の午後からと言う予報だった。
まだ夜が明けきらぬうちから次第に強まる風を受けながら道具を車に積み込む。
果たして今日は釣りになるんだろうか?
最後にしっかりはずしちゃったら、今シーズンが台無しだ。
ああ、うるさい! 行くったら行くンだい!! って誰としゃべってるの? |
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谷あいはすでに暴風圏の一歩手前。 |
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高速を飛ばして目的の川についたのはまだ薄暗い時間だった。ほどなく明るくなってきたがすでに風は強い。予報を信じるなら昼までは釣りは可能と踏んでいたが、なんのまえぶれもなく大粒の雨が降り出したかと思うとピタッと止み、今度は車を揺らすほどの強風が吹く。
あはは、なんか終わってないかい?
とは言えこのままおめおめ帰れるわけもなく、この日狙いの谷へ降りる。するとどうだろう、雨は頭上の木の枝葉が傘になり地表に届くのは僅かで、風も谷あいの斜面に遮られ谷底の川辺は平穏そのものだった。
いきなり元気が出てきた。だから言ったじゃんか。今日は絶対良いよってね(?) |
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緑に埋まって川は見えない。 |
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この日は前夜巻いた(と言っても数時間前!)ピーコックボディのパラシュートで通した。反応がシブかったり遠いようなら水面下のテレウエット系をとも考えたが、やっぱり最後はドライで締めくくりたかった。(ちゅうかその方が楽っていう話もあるのだが)
ドライに反応が無い事はなかった。しかし、出る魚は見事なまでにちっちゃいのだ、これが。口に入るの?って聞きたくなりました。 |
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なんてったって#12だから。 |
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ふと空を見るとびっくりするくらい高速で雲が流されている。どうも上空はめちゃくちゃ強風が吹き荒れているようだ。
う〜む、のんきに釣りをしていていいのだろうか?
とは言えまだ帰れる釣果ではない。いやいや、まだ釣り始めてからたいして時間も経ってないし。
しかし、あるポイントを目の前にして予感があった。漠然と釣れる気がして慎重すぎず投げやりにでもなくそれはきっとなんの意図もないそれこそ自然に昆虫が落下したかのようなプレゼンテーションだったのかも知れない。
少し横に離れた石際から飛び出してきた魚は水面の毛ばりを引ったくるようにくわえ込んだ。 |
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8月31日です。
自分がメインで釣り歩く西中国山地はこの日で禁漁となるわけで、なかなかその日に釣りに出掛けられるかどうかというのもあるが、特別な日だという思い入れは解禁日同様釣り人にはあるだろう。
そんな日に満足のいく一匹を手にする事が出来るのはきっと幸運なことだ。 |
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背中の黒点に朱点が重なり赤い星がちりばめられたような魚体を見て勝手に「アカボシ」と名付けた。
今年最後の一匹。
釣りにはきびしいこのエリアの夏。
川に水は無く魚の姿もちょっとやそっとじゃ見られない。雨が降り増水してようやく、っていう状態がこのあたりの常である。
釣りをする方も魚も川もすっかりくたびれている。もうそろそろ休もうかなって、そんな気分もないではない。禁漁期間は魚にも川にも釣り師にも必要な休息なのだろう。
雨の止み間が短くなってきた。台風もすぐそこまで来ているようだ。そろそろ引き上げ時かもしれない。
んっ? まてよ。たしかこの先のポイントは前回いい型を逃したところだったゾ! |
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はい、おつかれさん。 |
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