第九話 ”残暑につき”
盆明けの一週間、一気に秋めいてきてこりゃいいやって思うが早いかすぐ暑くなりました。文字通り残暑の週末、懲りもせず西中国山地の奥底へ埋没しに行ってきました。
入道雲を見るとすげぇ〜って思うのだがなにがすごいのかは
わからないのである。
インターチェンジを降りて目的の川へ向かう右側の分かれ道にさしかかった時、対向車が一台やって来た。すれ違うのを待っているとなんとその車(ジムニーだった)も直進せずに分かれ道に入っていった!
そこから細い曲がりくねった峠道のチェイスが始まった!!(この時点で追い抜く気でいたのがこわい)。何でか知らんがそのジムニーが自分の予定している入渓地点に入ろうとしているような気がしてならなかった。ところがこのジムニー、飛ばす飛ばす。あっという間に引き離されてテールランプの赤い光も一切見えなくなった。ああ、今日の釣りが・・・。
目的の流域に到着した時、不覚にもつづら折りの峠道を飛ばした勢いで車酔いしてしまった(自分で運転してて!?)。先行したジムニーの動向を探るどころかシートを倒して休む羽目になってしまったのだ。
具合はものの数分でだいぶ良くなったが、どうにも出鼻をくじかれた感が視界の隅に残像になって見え隠れしているようで面白くない。
しかし、すでに日差しは川へ届いている所もある。頭を切り替えてとにかく釣らなきゃ。
天気は晴れたり曇ったりの中途半端な(いや絶好の)状況で、気温も日なたでも朝のうちだから十分涼しい・・・と思ったけど、いやいややっぱり暑い。日陰は天国なんだけどね。
今巷で話題のマイナスフロン、じゃなくてなんだっけ? きっと計測機器で計ったらすごい高い数値を示すんだろうねぇ。暑い街でわらわらしてる人には申し訳ないッス。
思えば解禁当初から随分釣りに出掛けたし、渓流との付き合いも10年を数えようとしている。渓流でリフレッシュっていうか、そういうのを強く意識した事はない。釣るのでいっぱいいっぱいだったからね。
それが去年、う〜んいや今年?くらいからか、山の川の空気感をやけに意識するようになった。ピリピリした獲物を狙うハンターみたいな感覚が少し薄れてきたのかな? それが釣りにどう影響するかっていうのもあるけど、年を経る毎になにかしら変化はない訳はないのだし。そういえば最近NHKもよく見るようになったんだよね(ってこれはあんまり関係ないか?)

木々に囲まれてふとロッドを振る手を止めると街の日常との距離がなんだかやけに遠く、現実離れしているように思えた。
でも実は川に立つ今が非現実的なのかもしれないのに。
降り注ぐ光と清浄。
などとぐだぐだ言った所で釣りは釣り。高速代と燃料代に見合うくらいの満足度は確保しようでぇ〜っ!(おおっ!現実的だ!!)
で、この子がドライフライにゆ〜っくりと出てくれました。実にシブイポイントで、でもこの季節ならではの出方だったなぁ。
単純で恐縮なんですが、この一匹で満足度はO.Kでっす。
昼が近くなりめっきり魚の反応が鈍くなったのをきりに竿をたたむ事にした。
帰り道、徐々に標高を下げ現実世界へ戻る途中、ふと真新しい林道が目に留まった。何があると言う訳でも無いのだが、気になって入ってみたら林の先に旧道と作業小屋が見え、隣には畑がある。
そして農作業をするおじさんのかたわらには今朝のジムニーが・・・。
入道雲の真下。まだまだ暑い。