第二話 赤い尾ひれの魚

四月中旬といえば水生昆虫も活発に飛び交い、石をはぐればカゲロウの幼虫がわらわらとはい回り、ニンフだろうがドライだろうがとにかく楽しく釣りが出来る季節だ。水生昆虫の観察もしたいところだが本分の釣りが最優先で、釣果が余裕先行とでもならない限りなかなかじっくり虫を見るところまではいかない。しかも当然週末ともなるとメジャーな川の目ぼしい入渓ポイントには釣り師とおぼしき車が早朝から停っている。

それでも折角の休みに出かけてきたのだから魚の顔は見て帰りたい。で、この季節にはまだ早いかと思われる上流域へ車を走らせた。もちろん上流へ向かえばほかの釣り師がいない訳ではないが、運良くこの日向かった支流にはまだ誰も入っていないようだった。
しかし、四月からこんな(左の写真)細い支流で釣りをせざるを得ないとは。それでも釣り支度を済ませるとそんな事は気にもとめず川に降りた。
シーズン初期はやっぱりアマゴかヤマメを釣る事が多いが、この支流はゴギの区間だった。そして今年の初ゴギが早々と掛かったのは川に降りて5分後だった。
23cmのゴギだったが、きれいな斑点にしっかり太い魚体で、更には見事にとんがり、しかも赤く染まった尾ひれが目を引いた。
季節や環境の条件とか個体差で魚体の色も千差万別なのはわかるが、こんな色の尾ひれのゴギは初めて見た。

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