釣り人が川を歩いてクモの巣を切ったりするから、その仕返しにクモはクモの巣でティペットを切るのかなあ。
クモの巣にティペットを切られてなくすフライよりも、クモが受ける被害の方が甚大だ。
梅雨の長雨でクモの巣がどうなるのかはよくわからない。雨で切れるならクモも納得するのかも。
ここのところ渇水の川で予想外に釣りが出来ていたが、この週末はようやく梅雨の雨のあと、増水が収まりつつある絶好のタイミングでの釣りとなった。
こうして見るとなんだか別の生き物みたい。
七月になったのだからこれからの釣りは雨がキーになる。
週の頭にまとまった雨が降り、その週末なのだから大いに期待出来るはずだ。
場合によってはドライよりも少し沈ませたほうが反応が断然よくなることもある。
まずはドライフライをたっぷりした水量の流れに落としていく。
ときおりドロッパエがつっついてくる。そんな場所はさっさとほっといて、次のポイントへ。
雨で息をふきかえした川の実力はこんなものじゃない。
朝日と朝もやで乱反射の渓を行く。
川と道路はちょっと離れているので、直接には見えない。
でも車の通り過ぎる音は頻繁に聞こえる。みんなきっと雨のあとの釣りを期待してこぞって押し掛けてきているんだな。
増水の川は普段流れない場所にまで水が流れるからポイントが増えたように見える。目ぼしいポイントを次々攻めて釣り上がる。
だがしばらくしてあまりにアタリが遠いのでフライを沈ませてみる事にした。ただ以前増水時に水面下で良かった時は今よりももっともっと増水していて、遡行も困難なくらいだったのだが。
そこまで大げさな増水、というほどではない。
フライとインジケーターとの間は50cmくらいとごく短めにとり、深い場所だけでなく浅い流れでも放り込んでいった。
だがどうにも魚の気配がない。いくばかしかのフライに対しての反応さえない。
増水の川にあれほど期待していたのに、魚の反応がないと途端にその川が釣れそうな気がしなく見えてくる。それは全く持って気の持ちようなのだが。
晴れているかと思えばパラパラと雨が落ちてきた。やはり梅雨のさ中の天気だなあ。
特徴的なのは腹部の線紋。すぐにそれとわかる。
ピックアップしたらなにかが引っ掛かってきた。
見ると赤ちゃんゴギではないか。こんなゴギしかフライに反応を示す魚はいないのだろうか?
目の前を黄色い虫がかすめ飛んでいった。目で追うと木の枝に止まった。
フタスジモンカゲロウだ。そうだ、この川は数年前モンカゲロウの集中化に出くわした事がある川だった。
その時はまだ五月、フタスジではない方のモンカゲロウだった。両方のモンカゲロウは生息場所も共通するのだろうか。
渓畔林に守られた川。それは魚も守られているということ。
モンカゲロウよりも季節の遅いフタスジは、クモの餌食になる確立が高い。 モンカゲロウとゴギとアマゴを育む
不思議な川。
フタスジを一匹見たら、そのあとクモの巣に引っ掛かっているフタスジがやたら多いことに気がついた。
この辺りがフタスジの羽化場所の境界だったのだろう。
何時ごろのハッチだったのだろうか。それともこの日ではなく別の日に羽化したのだろうか。
そう思いながらはたと気が付いた。春先からのカゲロウとかの水生昆虫を意識した釣りが、いつの間にかだんだん薄れてきていた。それはカゲロウ自体をあまり目にしなくなってきたこともあってだし、毎年のことではあった。
この日唯一のまともなアマゴ。といっても20cm弱(>_<)
じゃあモンカゲロウのパターンを結ぶのかと言えばそうはしない。
フライのマッチ以前にここには魚がいないようだ。
平日の雨のあと、週末まで待たずして入渓した釣り師にばっさり抜かれたのではないか、というのは僕の推測だが、それに近い状況なのかなあ。
なにしろこの川はインターチェンジから車で数十分のところにある、非常に近い川だ。
考えることは釣り師ならみんな同じだろうし。
いくらハッチがあってもライズがなきゃあなあ。
七月になって使うフライがテレストリアルの黒っぽいばっかりのフライではなく、フタスジモンカゲロウのハッチを意識した釣りができるのなら、きっともっと夏の釣りが面白くなる。
この川だって、増水と入渓の時期さえ合えば川の底力を目の当たりにすることだってある。

僕はまたワンパターンの真っ黒のフライをキャストした。
パシャッと水面が弾け、寄ってきたのは申し訳なさそうな顔をしたアマゴだった。
笹の海を泳ぐ〜。お、溺れております(^_^;