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(ここは・・・違う川か?)
大きくカーブしている川のその先にはあるはずのポイントはなく、辺りの風景も違っていた。 なんだかこの日の釣りの雲行きが怪しくなってきた。 いや、もともと出がけから空模様は怪しかった。 天気予報でようやく、ようやく春らしい日になると、待望の言葉を聞いて勇んで出掛けてきたのに、どうもまた季節が逆戻りをしているっぽい。 今年はいつまで待っても春が来ない。こないまま三月は過ぎてしまった。しかし、果たして季節の遅れは全てに影響しているのだろうか?
カゲロウに誘われて川に立つこともある。
カゲロウやカワゲラはちらほらと飛んでいる。例によってナガレトビケラも石の上をわさわさと動き回っている。
しかしヤマメの方はさっぱりだった。開けた川筋の流れのゆるいところを選んでフライを流してみてもヤマメが出てくることはなかった。 今年はまだ納得のいくような釣りはできていない。 今日こそはと思って来たのに、またダメかという気持ちが徐々に頭の中をよぎり始めている。 そしてそれに追い討ちをかけるように目当ての場所が消えていた。 そこにあるはずの流れは、この川ではなかったのか。
石が流れに変化をつけ、そこにカゲロウが息づく。
大きな淵に行く手を阻まれ、僕はいったん車へ戻ることにした。妙に足が重かった。
車の中でおにぎりを食べながら、さてどうするかと思った。この川でほかに良さそうな場所はと言っても思い当たるところがなかった。もしあったとしてもそれが本当にこの川にある場所なのかどうか、今となってははなはだ怪しい。 車を上流へ向けて走らせてみた。当てはなかった。しばらく行くと5,6軒しかない小さな集落があった。僕は車を停めて眺めながらのどかな風景だなあと思ったが、住んでいる人たちにとってみれば苦労だってたくさんある。のどかなだけでは生きていけやしないのだから。 と、そんなことを考えていたら集落の人らしいおじさんが僕に気付いて手を上げた。 そして手をククッと持ち上げるような仕草をした。(釣りか?)と聞いているようだ。 僕は頷いて見せるとおじさんもうんうんとこれまた頷いて返した。 ピンときた。よし、後半戦はここから入ろう、とそう決めた。
この川では初めて入る場所だった。どのみち僕は目的の川へは来ていない。こうなると様子のわかっているとかいないとかは関係なくなっている。
思い切って知らない流れに入るのも悪くない気がしていた。 川幅は十分広く上空も開けている。陽射しも少し出てきて幾分暖かくなってきた。 と、思う間もなくカゲロウが飛ぶ姿が視界に入ってきた。 一匹、二匹、いやもっと飛んでいる。これはいいんじゃないか。 僕は大きなカゲロウの飛翔を想像して大きめのパラシュートを結んだ。
まだまだ渋ってます。早く春よ来い。
水面を見ていると突然カゲロウが現れる。いきなりカゲロウの姿だ。水面で羽化をしているのではない。
これはナミヒラタカゲロウだ。川底で脱皮して亜成虫の状態で一気に水面に飛び出す。 そのかっこいい羽化に僕はすっかりファンになってしまっていた。 そしてそのナミヒラタが次から次へと水面から飛び立ち始めていた。 どの程度の数からスーパーハッチと呼ぶのかはわからないが、これはきっとそれに相当するくらいの数だ。 流れるフライのすぐ横にもナミヒラタが出現する。 本物に並ばれたらそりゃそっちを食べるだろうな、きっと。
開けた川は竿を振りやすいが、風の影響ももろに受ける。
一投目で水面でヤマメがくるりと踊った。掛かったがこれはスレだ。すぐに寄せて流れに返す。しかし良い反応だ。川原の石にはマエグロのダンが何匹もとまっている。
時間も午後のハッチが始まる頃だし、一番いいタイミングでいい場所に入ったのかもしれない。 川の流れも平坦なようで結構深みがあったりして変化が多い。 ていねいに流しているとようやく小さなヤマメが釣れた。 こんな小さいのしか居ないのか? いや、ここはきっとこんなもんじゃないはずだ。 僕は気持ちがはやるのを押さえようとしたが、次々と飛ぶカゲロウ達がそうはさせてくれなかった。
レギュラーのマエグロは堂々とした風格。
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またしても僕の記憶は混乱をきたしていた。
そりゃあこういった川なんてどこもだいたい似たような景色ではあるが、それにしても僕の記憶の中の場所やポイントがこうも見事に間違っていると、我ながら呆れてしまう。 こんな記憶の間違いは初めてではない。これも老化なのかなあ、なんて考えてみても始まらないので今は目の前の流れに集中することにした。 空は薄日と曇りが交互にきて、不意に強い風も吹いたりする。 そうなると虫たちも姿を消し、目の前の景色もこごえる川へと変貌していくのだ。 ![]() ![]()
カゲロウはすぐ逃げるがカワゲラはひとなつっこい。
里の春はまだかいなー、とスタコラサッサ。
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あどけない顔は、なにがおこったの? という感じ。
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川原を歩くのにも迂闊に足を踏み出せないくらいにそこここの石にナミヒラタがとまっている。
僕はすっかり興奮してしまった。 そして同時にあることに気が付いていた。 これだけ水面に絡むハッチがあるのに、ライズが全くなかった。 カゲロウが居るからと言ってヤマメが必ず居るとは限らない。 季節の逆行のせいか、ここにはヤマメは住んでいないのか、それとも釣り切られてしまったのか。 しばらく釣り上がってみたが、ヤマメは姿を見せてくれなかった。 それでもこれだけカゲロウが飛ぶのだからいつかヤマメも戻ってくるのではないか、と僕は思った。 水面にはまた新しいナミヒラタが姿を現していた。 ![]()
ナミヒラタの飛ぶ川の釣りを思い描いて。
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