市内で買い出しをしている時、およそ1年前の雪中キャンプを期待させるような天気ではないな、とその晴天を恨めしく思いながらスーパーでカゴの把手が折れんばかりの買い物を済ませ、「なに、山とこことじゃ違うのよ」とそんな街でぬくぬくと暮らすやからに山のことなんてわかるの? なんて言われそうなことをぶつくさと呪文のように唱えながら高速に乗る。トンネルをひとつくぐるたびに雪のない山肌を見ては雪がある時とは違う意味での冬キャンプの不安を感じつつ、いやいやもう後戻りはできませんぜ。
サービングポットで炊飯。お米が立っとります。
インターチェンジを降りても峠をのぼっても状況に劇的な変化は見られず、心細い限りの積雪に「待てよ、逆にこれならキャンプ場まで車で行けるのでは?」と、国道から奥まったところにあるイキツケの某湖畔キャンプ場へハンドルを切った。
状況は見事ビンゴ! 一度は途中で車を置いて荷物をソリで運んだが、結局は車をキャンプ場の広場まで乗りつけた。雪はそう深くはないが、それでも一面銀世界。結局ここまで来れたのは雪が少ないからこそで、ホラ今日は良いって言ったろ(?)
足跡一つないテントサイト。レタッチしたのではありません。
スノーシューもカンジキに見せるゲロ氏。
今年はなにかと変化点のあるY本氏。
今回の顔ぶれは去年の雪中キャンプといっしょ。今回スノーシューと4シーズンテントにシュラフをフンパツしたゲロ氏は、たとえ積雪3センチでもむりからにスノーシューイングを敢行していた。
Y本家のプチ王女様はかまくらの建立に熱意を燃やし、しきりにゲロ氏に指示を飛ばす。日帰りで合流した山K氏夫妻にさえ建立資材となる雪の運搬をうながしていた。
それに触発されたかY本氏は今年こそはのイグルー作成に取り掛かり、かくして1月中旬の芸北町の一角に熱くスピリッツが交錯し始めたのだった。
山K氏夫妻 愛車ジムニーにて合流。
「私のためにお運び。おっほっほ」。
そして日没。でもこれからが本番。 日中の穏やかさも一気にその気配を消す。
日がかげり早々に山K氏夫妻は帰ってしまって、するとだだっ広い雪原に車2台にテント3張りだけとなってしまった。
Y本家のプチ王女様はすでにかまくら建立には飽きてしまったようで、ソリ遊びに没頭なさっている。Y本家の長男K.bは周辺の散策から帰ってこない。Y本氏とゲロ氏はいつのまにやら雪ブロックを見事に積み上げ、この日の雪質では限界のところまでイグルーを形作っていた。さしずめイグルーの棟上げといったところか?
そういえばゲロ氏のスノーシューイングのさまはまさしくマタギかイヌイットか?というような風体だったなぁ。
突如雪原に出現したイグルーの下半分。
いにしえの狩猟民族たちは厳しい冬を乗り切るためにかくも過酷な住居形式を根城とし、フィッシングあるいはハンティングにより糧(かて)を得ていたのだろうか? などと空想にふけるゆとりもなく、使い慣れないスコップで雪面の表層プレートをこそぎ取り、きっと帰ったら筋肉痛だなと思いつつイグルー上端に乗せて行く。とにかく風よけになりゃーいいんだって。と投げやりなのはわたしだけだった!?
陽のあるうちはやわやわだった雪もあっという間にかちかちに凍ってきているようで、面積稼ぎの雪プレートを積み上げるのはわりと容易だった。
ふと空を見上げると西の空に一番星が煌めき、きっとそれは極北のイヌイットたちの見る光とそう時間のへだたりなどないのだろうと思う間もなくハラがぐるると鳴った。
降る宵と一番星。
つづく