「あーっっ!!!」
北の山あいにK氏の断末魔の叫びが響き、今年のゴールデンウィークの幕は切って落とされました。

例によって、五月らしからぬ日差しは夏の到来を微塵も疑わせないほどで、およそひと月前まで雪が降っていたなんて想像もできません。
私たちは渋滞の高速を北へ。真夏よりもこたえるかもしれない慣れない暑さからの脱出を試みます。
でも新緑は目に眩しく、ナニカを期待させてくれます。
どんな釣りのどんな場面よりも心躍ります。
K氏のこん身の一投は、自分に向かって走ってきたアマゴに圧倒され、叫び声とともに終わってしまいました。
よもや周りを取り囲むギャラリーの視線にプレッシャーを感じるK氏ではないので、ここはアマゴに軍配、ですね。

仕切り直しです。まずはキャンプサイトに戻りビールでアタマを冷やしましょう(ビールで冷える?)。
アマゴは逃げませんし、まだ昼過ぎで時間はたっぷりあります。
狙いを定めるK氏。風景と渾然一体です。
キャンプサイトは私たち同様、街の暑さからの脱出組がひしめいています。その数の多さは過去に例を見ないほどで、これくらいライズもあったらなぁ・・なんて思うのは、毛鉤釣り人としては正しい妄想です。

先ほどイタイ思いをしたK氏は、すでにリベンジの画策を悶々としているようです。私はとりあえずビールです。釣り道具も持ってきていますし、この近隣には良い釣り場がたくさんあります。でもまずはビールなのです。
恒例のコンビネーションタープです。
Y本家の五番目の家族。
大きくなりました。
きっと今年見る最後のサクラ。
散り盛りでした。
血圧・脂質・尿酸値?? 何をおっしゃってるんですか。そういう懸案を忘れるためにこうやって街を離れてビールを飲みに(?)やってきたんです。とは言え、少しは燃焼もしないといけませんかねぇ。K氏の釣りを見ていて、私もなんだか釣りざおを振りたくなってきました。

と言う訳で夕方になってから、ロッドビルダーのM川氏と峠の向こうの川へ行ってみることにしました。
やはり気持ちは昂ぶります。
哀れクモの餌食となったカゲロウ様。
フライセレクトの参考にさせていただきます。
家から気合いを入れて釣りに出掛ける時とは、わずかにおもむきを異にするのがキャンプ中の釣りです。
なにしろ釣り場まですぐなので気の向いたときに出掛けられますし、またすぐにねぐらに戻ってこれます。
この気軽さがなんだか釣りに余裕を生むようです。

川へ着くとすでにカゲロウの飛翔が大変なことになっていました。そして、早速ライズを見つけてしまいました。
こうなるとM川氏も私も目の色が変わります。
まずはM川氏が 5'03" #2 3PC を使ってライズを攻めます。
小さい魚でもその引きを存分に楽しめるこのロッドは、まさにキャンプ中の釣りにうってつけのロッドです。
護岸の際。ライズの主が身を潜めています。
日が暮れるとやはりそこはまだ五月のそれです。
しっかり着込んで夜の宴の時間です。昼間、あれほどの賑わいだったのに、夜はひっそりしています。泊まらずに帰った方たちもいらっしゃったのでしょうか。
冷え込む夜は暖かいものを食べて程々に飲みます。
先ほどの 5'03" #2 で私もヤマメを釣りました。心地よい引きがまだ手の中にあります。どうやらビールと釣りと宵の静けさに私も酔ったようです。
ランタンの燃焼音が響くほど、静かな夜。
つづく