其の二百四  ボビンホルダーのあれこれ
巻くフライの色に合わせてボビンホルダーのスレッドを交換したりしないから、徐々にボビンホルダーの数は増えてくる。
今ざっと数えてみたらだいたいフライを始めてから十五年くらいの間に十本のボビンホルダーを買っていた。
でもこの十本を全部均等に使っている訳ではない。普段使うのはその中の半分かなあ。
そもそも十本もボビンホルダーを買った理由は、新しい製品とかが出て形や機能が変わったからだ。新しく出されるものは当然いろんな所が改善されて使いやすくなっている。
結局タイイングで一番長く手にしている道具がボビンホルダーなんだよなあ。
ボビンホルダーの好みを言うと、ボビンをセットする部分の握りやすいものがいいかなあ。掌の中にしっくりと収まる感じがすると、タイイング作業がやりやすい。
その条件を満たす製品はT社のもので、ボビン部に角度がついていて曲がっているタイプのものだ。この製品は僕がフライを始めた時にはすでに売られていたので、かなりのロングラン、スタンダードなツールになっている。
ボビン部の曲がりが手の中で保持しやすく、特別不満もなく何年も使い続けている。
同じT社がボビンホルダーのチューブ部を交換できる製品を出していた。チューブの太さも選べたし、セットする時にチューブを任意の位置で固定できたので、チューブの長さも調整できる機能があった。
そのボビンホルダーはそういう機能面以外にも、道具としての魅力があった。
それまでのものよりも重量が重かったのだ。
タイイングはどうしても途中でボビンホルダーを垂らして、完全に手を放すことが必要になる。その時にはボビンホルダーの重量でマテリアルをスレッドで押さえておくことになる。
軽いボビンホルダーだとちょっと手が当たってハックルがパラパラとほどけたり、なんていう経験を何度もした。
ただボビンを保持するだけがボビンホルダーの仕事ではない。
少し重めのボビンホルダーは、そういう時に安心感があってよかった。ところがそのボビンホルダーがいつの間にかT社のカタログからなくなってしまっていた。
僕はこの製品を二本持っているが、もう一本くらいあってもよかったなあ。保持する感じもチューブの長さ調節もそして重量もなかなか具合がよかったのに。
と、そう思っていたら、今度はC社から新しいボビンホルダーが出た。ソルトウォーター用などの大型フライタイイング用ということらしいが、僕は小さなフライを巻く時にこそボビンホルダーの重量が必要だと思っている。
このボビンホルダーはボビンのセットに使うセンターシャフトの自重と本体の自重で、T社の廃盤の製品よりも重さがある。
しかもボビンを止める強さも調節できるので、スレッドにかかるテンションも微調整が可能だ。
タイイングはツールの性能で決まる訳ではないが、使いやすいツールを使ってフライを巻くのは、それだけでも気分がいいものだ。
これからの季節柄もあるので、この新しい黒いボビンホルダーはテレストリアル専用ということにしてみようか。