其の二百五  水中のテレストリアル
釣りに行かない間にどんどん季節が進んでいって、用意しておいた春や初夏のフライという感じではなくなってきた。
この梅雨が開けたらもうすっかり陸生昆虫の季節だなあ。
開けきれなくても、梅雨の合間でももう使うならアントやビートルだろうなあ。
今まで夏のテレストリアルパターンと言えばやはり黒っぽいドライフライばかりを巻いていた。
しかし、去年の釣りで偶然沈んだフライで釣れたということが頻繁にあったので、水面下のパターンも巻いてみることにした。
夏こそ沈めて釣るべきか?
去年水面下で釣ったフライは、フックにハックルを巻いただけのワームだかなんだかよくわからないようなフライだった。
フライの形よりその時の流れ方が良かったのかも知れない。
川に落ちた毛虫が浮いたり沈んだりしながら流されていく、そんな様が自然に演出できていたのだろう。
カゲロウも同じだろうけど、必ず浮く、必ず沈む、ということはない。同じ個体が浮いたり沈んだりもあるだろう。
陸生昆虫はその傾向が更に強くあるのではないかと思う。
去年好調だったフライ。浮いても沈んでもゴギが食いついた。
高く強い浮力で流れるドライフライにバシャッとゴギが出る。そんな釣りが夏は楽しいが、あの暑い季節にそう簡単には水面まで危険を犯して出てきてはくれないだろう。
沈めてしまえばあっさり釣れることも何度も経験している。そうなれば水面下を攻めない手はない。
ただ、ウエイトを巻き込んだヘビーなニンフのようなパターンよりも、やっぱり浮いたり沈んだりを繰り返す、本物の昆虫のようなパターンが有効なような気がする。
だから巻くパターンもノーウエイトでピーコックボディのソフトハックルのようなやつとか、ワームのような感じのものを巻いた。
一応浮いても沈んでもそのまま流して釣りが成り立つ、という狙いだ。
ただノーウエイトだけだと、攻めの戦術が限られるので、一応ウエイトありのパターンも用意することにした。
ザグバグにウエイトを巻き込み、こいつには深い淵をゆらゆらと漂ってもらう。
実際淵の底まで沈んでいく陸生昆虫はいるのかどうか。
死んでしまった個体が水流で沈むとかそういうことがあるかどうか。
でも深い淵の底に腹を空かしたヤマメがいることは考えられる。その時に重たいザグバグが捕食対象として見えるかどうかは、やってみないとわからない。
ザグバグにはしっかりウエイトを巻き込んだ。