其の二百七  悪あがきのタイイング
盆連休も終わり、盆のあとに今年最高気温を記録。
夜は相変わらず熱帯夜が続き、いったいいつまでこんな日が続くんだと思っていた。
すると友人から「夜は虫が鳴いている」と聞き、そうか、こんな猛暑日が続いていても確実に季節は進んでいるんだなあと、少し安心した。
きっと山の方はもっと季節の変化を感じられるに違いない。
今月末で渓流は禁漁になる。次の週末がラストチャンスだなあ。
そう思ったら、急にタイイングをしようと思い立った。
急に巻こうと思い立ち、それならやっぱり無難にアントか。
町は梅雨明け以降まともな雨はほとんど降っていないが、アメダスのレーダーを見ると、釣りに行くエリアはゲリラ雷雨のような雨雲が所々発生している日がある。
災害をもたらすような豪雨はごめんだが、ちょうどいいくらいの雨量なら期待できるかなあ。
少なくとも渇水で川がからからっていう状況ではないだろう。
もし次の週末、釣りに行こうという気になったとき、毛鉤がない。今ならやっぱりテレストリアルか? とにかく簡単に巻けるアントやピーコックボディのパラシュートを取り急ぎ巻いた。
シンプルなテレストリアル。量産に向いてます。
季節が変わろうとしている時期だから、渓魚が捕食するのは陸生昆虫ばかりではないだろう。
秋のカゲロウが飛び始めていたとしたら、そういうパターンもあって無駄にはならないか。カゲロウのパターンなら春用のフライボックスにかなりストックがある。
釣りに行っていないから毛鉤を無くす事もない。それは釣りをする者にとっては不甲斐ない話なのかも知れない。しかし、秋の気配が感じられてもまずはアントやビートルのパターンを投げてみるかな、やっぱり。
なんだかあれこれ考えながらタイイングをしていたら、すっかり釣りに行く気になってきていた。
実際に行くかどうかはまだわからないが、久しぶりにこういう釣りをイメージしたタイイングは新鮮で刺激的な感じがした。
アントはダビング材でコブを二つ作り、ビートルはボディにピーコックを巻くだけ。
ついにはグレーのボディにグリズリーのハックルで、何を模したものだかわからないような毛鉤まで巻いた。
要は簡単に早く巻けて、無難に釣果が期待できればいいのだ。
きっと禁漁になったら当分タイイングなんてしやしない。
その年最後の釣りのための最後のあがきのタイイング。
それが気分よく最後の釣りを終えられる釣果に繋がるといいんだけどなあ。
パラシュートばかりでキョウシュクです。