其の二百二十五  二年ぶりのエルクと解禁の釣り
先週ニンフを巻いたから、それなら今週はドライだ。
という訳でもないけれど、フライボックスを開けてみたらこれまたびっくりするぐらいに歯抜け状態になっていた。
解禁最初の釣りでニンフだけで通す度胸があるかというと、そんなもの持ち合わせがない。
で、あわててドライも巻くことにした。
三月の川で使うドライフライ。どんなのがいいかなあ。CDCで繊細なやつにしようか、それともエルクへアで・・・。
エルク。そういやしばらく使っていない。
スタッカーはいつの間にか増えています。
エルクへアというマテリアルを忘れていたことが意外で、逆に巻いてみたくなった。
引き出しからエルクを取り出しハサミで切ってスタッカーに入れようとして、ツールスタンドに見慣れないスタッカーがあることに気が付いた。
小型のスタッカーは、どうやらおととしくらいに買ったもののようだった。そしておそらく一度も使ったことはない。
う〜む、いったいどれだけ巻いてなかったんだ。確かにスタッカーでとんとんする感触はずいぶん久しぶりなのだとすぐにわかった。
こういうパターン、名前はあるのか?
春先ならやっぱりカゲロウという心情になる。現に去年の最初の釣行ではカゲロウの飛ぶ姿もライズも見れた。
せっかくエルクを使う気になっているので、エルクを使ったカゲロウのパターンをと考えた。で、行き着いたのがクリップルダンだ。
羽化途中の状態を目撃したことはないが、もしこんなクリップルダンのような状態で水面付近を漂っていたら、ヤマメにとって最優先捕食対象になるのではないだろうか。
クリップルの状態は一瞬かもしれないけど、ヤマメに与えるインパクトはきっとかなり強い。
このフライに出るときにはためらわず食いつくのです。
最初にエルクのウィングで、その付け根にパラシュートのようにハックルを巻いたパターンを巻いてみた。
このフライは以前からあって雑誌やウェブでも見た事のあるものだった。ずいぶん前に一本だけ巻いたがうまい具合にハックルが巻けずそのまま遠ざかっていた。
ただその一本は確か解禁最初の釣りで初ヤマメを釣ることができたのは覚えている。それを思い出し巻いてみたのだが、今回はなんとか巻くことができた。
しかしこれはカディスを表しているのか、それともカゲロウか。カゲロウだったらテイルがいるのか。ないからやっぱりカディスなのか。
釈然としないまま巻いたが、もしカディスならボディとハックルが黄色っていうのはちょっとミスマッチかなあ。
解禁からすぐの頃このフライで良い釣りをした記憶がある。クリップルダンを釣り上がりに使うつもりはないが、その時は目立ったハッチやライズはなかったように思う。
それでもクリップルダンが良かったのはこの形態がもつアピール力なのか、それともこのような状態のカゲロウを偏食しているヤマメばかりがいたのかも知れない。
こうやって思い出してみると、解禁後の早期の釣りとエルクへアを使ったフライとはなかなか相性が良さそうだ。
今さらながらだけど、エルクへアは良いマテリアルだなと、再認識した。巻き上がったフライもいかにも毛鉤、という面持ちでこれも良いところだ。
扱いやすいシンセティックもいいのだけれど、そういうフライばかり巻いたり使ったりしていると、またこういう獣毛の材料で巻きたくなる。
野生を野生で釣る、なんて、そんなふうにいけばいいけど、なかなか春を感じないまま解禁まであと少し。