其ノ二百三十二  バンブーロッドの休息
例によって休みの前日、M川氏の工房を訪ねた。
この度はロッドを携えて。ロッドのメンテナンスをしてもらうためだった。
早速ロッドを見てもらう。M川氏はケースから手慣れた手つきでロッドを取り出した。フェルールを継ぎ、ロッドをチェックする。
「少し癖が出とるのう。」とM川氏。どうも僕のキャスティングにはちょっと癖があるらしい。
その日はロッドを預けて帰ることにした。
今年はほぼこの二本で。もちろん来年も。
生み出した手が再びそのロッドに触れる時。
いまだに使い続けているフィルムカメラも、以前は定期的にオーバーホールに出していた。しかし使用頻度の減少とともに、はっきりわかる故障でもしないと修理に出さないようになってしまった。
オーバーホールは手に取ってわかるくらいの調子の変化があるかと言われると、正直明確にはわからない感じではある。
しかしプロフェッショナルの手により細部までチェック調整してもらったことで、次使う時の安心感と充足感が手応えとして感じられる。
ちょうど点検修理に出していたへリコイドリングにガタが出ていたレンズが返ってきた。持ち歩く時カタカタする感じが気になっていたがきれいに調整されていた。
バンブーロッドも同じだ。
ひとシーズン使って疲労の溜まった竹がM川氏の手によりリフレッシュされるような気がする。
まっさらなロッドもいいが、使い込んでそれをまたビルダーの手によりしっかりとメンテナンスしてもらったロッドは、次使う時がまた楽しみになる。

ただその前に半年間ロッドに休んでもらう。
また渓で振るときまでは、メンテナンスされロッドケースの中でゆっくりと。
でも時々は出してみたくなるかな。
きっと持っただけで調子がわかるんですよね。
グラファイトやグラスロッドならメンテナンスと言ってもブランクやガイドをティッシュで拭くくらい。
それ以外のことなんてやったことはなかった。
しかしバンブーロッドならそうはいかない。
自然素材の竹なのだから、使っているうちにいろんなことが起こる。僕は釣りでは使うけれどもそのメンテナンスに関しては全くの素人だ。
ここはビルダーであるM川氏に委ねるのが最良の道だ。