其ノ二百四十三  晩秋の港紀行
海のフライを始めてから何年か経つが、禁漁になってから海に釣りに行き始めるまでの日数は、今回の釣りが一番短い。
たいてい最初が年を越した初釣りか、年越し前でももっと十二月の中旬くらいだった。
寒風の吹きすさぶ日や晴れた穏やかな日もあったが、いずれもすでに冬になってからだった。
この日が秋なのか冬なのか、数日単位で暖かさ寒さが逆転する乱れた季節感の日々。
その中でなんとか晴れの週末を選んで島へ向かった。
見下ろすって気持ち良さそー。
静かで穏やかな港。なんか穏やか過ぎる気も・・。
島の日曜日は釣り人が多い。目星をつけていた港はことごとく車を停める場所が埋まっていた。
港の防波堤もずらりと釣り人が並んでいる。
二つくらい港をパスして、最初の島から次の島へと橋を渡った。
車にナビはついていないのでiPhoneで現在位置を確認、近くの港へ向かった。
橋をふたつ渡り継ぐとさすがにちょっと釣り人は少なかった。この港はまだちらほらとしかいない。
車も停めれたのでここでやってみることにした。
満潮が十時くらいだったので、上げ潮のうちにちょっとでも釣りをしようと、僕としては海の釣りでは珍しく早起きをして出てきた。
この日も朝は結構冷え込んだのでかなり着込んできた。しかしどうやら少し脱いでも良さそうだ。陽は暖かく風もほとんどなかった。
さて海の様子はとのぞき込んでみると、小さなメバルが防波堤の足元にちょろちょろ泳いでいるのが見える。更にその下には少し大きめの魚影も。
よしよしと僕は早速支度をし、フライをキャストした。
ソルトウオーターゾンカーの効果は・・・?σ(^_^;)
わっとフライに魚が群がってきた。合わすが掛からない。またキャスト、またわっ、掛からない。
しばらく繰り返していたら魚は寄ってこなくなった。スレたか。
しばらくそんな調子でロッドを振るが小魚に突っつかれる程度だ。
場所を変えてやってみると今度はスーッと大きめの魚がフライに突進してきたが、直前でストップ。
なにか食いつかせる決定打がないのか。
動きで誘うならと、今回新たに巻いてきたソルトウオーターゾンカーを試してみることにした。
こいつばっかり・・(´ヘ`;)
足元にこそ大物が。
港に着いた時はまだ満潮前の上げ潮のはずだった。しかしすぐに満潮になってしまった。
なにか呆気なく満潮になった感じだった。
上げ潮ってこんなもんか? もっと潮の流れがはっきりと出てくるんじゃないのか? 
ソルトウオーターゾンカーは空振りだった。なにしろ沈まない。水面近くでゆらゆら引っ張っても魚たちは素通りしていくだけだった。
車に戻り買っておいたおにぎりを食べていると、何人か釣り人がやってきた。下げ潮を狙ってきたようだ。あれよあれよという間に防波堤はかなりの釣り人で埋まってきた。
僕も焦って防波堤へ向かった。
広く空いている所に入って足元をのぞき込むとでかい魚がぐねっとうねった。
なんだ〜っと思ったがすでに遅く魚は海底へと潜っていった。
防波堤の釣り人たちはそんな足元の魚には見向きもせず遠くへと投げ竿で仕掛けを投げていた。
無論彼らはこの魚を狙っていないだけのことなのだろう。僕も見たからと言ってこいつが釣れるとは思えず、また最初のように小さいメバルを攻めることにした。
#14のクレージーチャーリーを落とすと瞬時にメバルが食いついた。
一応メバル様とご対面。しかしまだまだ課題が。
メバルのあとはギザミばっかりが突っついてくる。
潮は引いているようだが、潮流が目に見えるほどではなかった。
以前潮流の発生とともにメバルの反応が良くなったのは、狭い海峡で釣っていたからだった。
この港は向かいの島まではかなり離れているし、潮流と言っても実に穏やかに緩やかに流れているようだ。
もちろんこういう場所ならそれなりの釣り方があるはずだが。
僕は飽きもせずフライを突っつくギザミを眺めながら、少し冷えてきたのを感じた。
陽が傾いて、釣り人たちも帰路につく。