其ノ二百五十一  メバル求め、南下の果てに
山へ釣りに行ったら帰ってから地図を見る。
今日行った川は山を越すと川があるのか、とか、この川とこの川は同じ峰から流れ出しているんだ、とかを見るのが面白かった。
海へ行った時もiPadでMapを見る。今日はここまで行ったのか、とか、ここだともう四国が近い、とか。
橋で繋がった島を渡り繋いで、目的の島までやってきた。
天気予報では晴れだったのに、どう見ても下り坂。
こりゃどうやら四国の予報を見るべきだったか。
渋滞が始まる前に、この橋を通過して。
平清盛は歴代の大河ドラマと比べるとちょっと視聴率では苦戦を強いられているらしい。
とは言えゆかりの土地ではかなりの盛り上がりを見せていて、経済効果もかなりのものだとニュースで言っていた。
その勢いを受けた海峡の町ではドラマの衣装や船を展示する施設がオープンして、こりゃあとっとと通り過ぎないと大渋滞に巻き込まれたら潮流のいい時間を逃しかねん、と僕はトイレ休憩を二分で済ませて先を急いだ。
風が強くどんより曇っていた。
ほかに釣り人は数人いた。竿をたてかけて車の中で待機していたり、防波堤の突端で辛抱強く竿を出している人もいた。
潮はちょうど満潮。そのうち下がり始めるだろうが、これは潮がどうこう言うよりもこの荒れた天気の方が問題だ。
漁港の短い防波堤で投げてみるが満潮なのと強風で、なんだかなにをやっているかわからない状況だ。
漁船が一隻、朝の漁から帰ってきて僕の目の前に入り込んできた。僕は早々にその防波堤を諦めた。
島唯一の自販機。Hotはあるか?
この日はこんな港。陽射しが恋しいわあ。
この下があんなことになっているなんて。
スイミングシュリンプの効果か?
そもそも今回の釣りはsnaphookを使った新しいフライを試すのが目的だった。カブラの動きを参考にメバルを誘う動きをするフライというつもりで何種類か巻いてきた。
港の南側の長い防波堤にやってきた。長い分内側が穏やかになっているような感じがしたからだ。
長い防波堤の外側から海を見ると、その先にはどうやら四国が見えているようだ。ここからだと僕の住む町よりも四国の方が近い。
防波堤の内側には小型の貨物船がとまっていて、荷卸しのゲートが防波堤側に向けて倒されていた。
突端には最初から居る釣り人。見ている間に何匹か釣っていた。僕もフライをキャスト。防波堤内側は予想通り波静かで少しは釣りやすそうだった。
釣った〜っていう手応えのある一匹。
防波堤の内側も徐々に波が立ってきた。そしてぽつり、と雨が落ち出した。
僕は少し別の場所で粘ってみたがウンともスンとも言わなかった。
やっぱりあそこか、と僕はまた貨物船のゲート下に戻った。
メバルの群れは戻っていた。フライを投げ引っ張ると、群れのメバルはまったく反応しない。
こうなると最初の入れ食いはフライの動きで釣れたのか、メバルの活性が高かったからなのか、どちらかわからない。
雨足は強くなった。清盛渋滞はまだ続いているだろう。
僕はもう一度フライを投げた。
結局フライの効果はどうだったんだ?
いくらかキャストしても反応なし。魚影も見えず潮が引き始めても防波堤内は目立った潮流も起きない。
ふと貨物船のゲートの下の海面が影になっている所に目が行った。
「?」 いる。うじゃうじゃいるではないか。影になっている所の水面付近にメバルが群れている。
こういう状況だとどうなんだ? と思いながらキャスト。群れの向こうにフライを落とし、群れを突っ切るようにリトリーブ。一発でかかった。
またキャスト。リトリーブしてちょっとアクションを加えると水面直下で魚影がぐねっとうねる。よしっ!
立て続けに三匹、四匹、徐々にサイズも大きくなり、僕はひとりでにやけ始めた。
フライを交換してみることにした。アイが縦面の穴のタイプ。これもワンアクションで一回で来た。
さらにロッドが大きく曲がるヤツも掛かった。しかしバレた。
バーブレスだったからか?
それでも調子に乗って続けざまに投げていたらだんだん掛からなくなってきた。
いかん、さすがにスレてしまったか。
少しポイントを休ませてからまたキャストしてみた。最初ほどには食いついてこない。
調子に乗り過ぎたかー。