其ノ二百五十二  川を巻くか、海を巻くか
まあ、要は自分のフライで納得いくくらいメバルが釣れれば、ということになる。前回の釣りはそれに近いが、一回だけならたまたまということもある。本当に自分の巻いたフライでメバルを誘えていることに確証が持てればスッキリする。
そうなれば心置きなく川のフライを巻く事ができるか? と思うと、さにあらず。
メバルもいいペースで釣れるとそれはそれで面白い。当たり前だがそうなるともっと行きたくなるのも自然。僕の場合海のフライは紛失や破損が激しいので、タイイングはそっちをやることになる。
川のフライは今までの在庫がなくはないのだし、いざとなればそれで釣りはできる。弾数も少ないし心情的にも海の方に注力することになるのかなあ。
ドライフライの繊細さが新鮮です。
解禁まであとひと月を切った。
あちこちのブログで、すでに釣りが始まった長良川の解禁の様子を見たり、最近ではfacebookのニュースフィードでいろんな人の解禁に備える様子を見たりと、春を目前にしての過ごし方もずいぶんと様変わりしてきた。
変わったのはそれだけではない。
僕は以前ならこの時期は春のフライをせっせと巻いていたのに、今はちょっと様子が違う。
まだ決着のついていない海に固執していた。どんな着地地点をイメージしているのか?。
いや待てよ。海に意識が向くのは川が禁漁期間だからではないのだろうか?
海をやり始めた頃は禁漁期間のほんの暇つぶしのノリだった。
それから年月が流れようやくちょっとは海でも釣れ出して面白く感じるようになったが、それも解禁するまでの期間限定の感情のような気もする。解禁になったら川が気になって海どころではなくなるのではないか? 
禁漁の時もあっさりスイッチが切り替わる釣り人(僕)の性癖のことだから、十分あり得る話しだ。
メバル用はこんな形に落ち着きつつある。
だが思い返すと去年の解禁後、冬の雪の多さはシーズン初期の釣りにかなりの影響を与えていた。今年も各地で記録的な大雪が降っているし、僕のよく行く川のあたりの積雪も1mを超えている。
去年は三月は川では思うような釣りができなかった。今年もかなりきびしい状況が予想される。それなら三月はまだ海へ行くと言う手もある。メバルも春がいいんだろうし、わざわざ条件の悪いエリアへ出掛けるのは得策ではない。
解禁になって気持ちが落ち着かなくなりそうなのもわかるが、三月に海へ行くのも悪くない気がしてきた。

先日、ニホンジカのボディヘアを入手した。日本のシカのヘアははたしてどんなものなのか、とても興味があった。
何かを呼び起こしてくれた一本。
一本だけ川のフライを巻いてみた。ニホンジカのヘアはとても繊細で、細軸の#13のフックと相まってそのはかなげなフライに春の川が頭をよぎった。
やっぱり川かな。またしても気が変わってそんな気分になった。
二月という月は川に思いを馳せる月なのかもしれない。
そんな、釣りに行かない時間も楽しむのがこの釣りだったなあと、思い出した。
巻きたいフライを巻いて行きたい所へ釣りに行けばいいのだが、優柔な僕はバイスの前で次のフライを迷っていた。